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あの人は定期的にいろんなところへ連れてってくれる。
ある時はとっくの昔に廃業したと思われる古びたアトラクションが置かれた遊園地。
ある時はまあまあ海岸が汚いけど地平線の彼方が見える広大な海。
ある時は彼の実家らしいめちゃくちゃ大きなお屋敷……は、何故か彼は嫌そうな顔をしていた。
なんでもここは彼にとっては嫌な思い出だけが煮詰まった場所なのだと。なんでそんなとこ連れてくんじゃと聞けば、彼はアッサリ答えた。
「ここで僕と君は出会ったから」
「夢で?」
「現実に決まってる」
私の頰をむにむに緩く引っ張りながら彼は言った。
誰もいない屋敷の外をぐるぐる回ってもやっぱり何も分からない。
正直にそう伝えれば、彼は一言そっか、とだけ呟いて、私の手を握る。
いつも「瞬間移動」をする時、彼は決まってそうする。
普通に瞬間移動とか言ってるけど、何度も目の前でやるのを見てたらいつの間にか慣れてしまった。
「次はどこへ行こうか」
思い出せない私に対し、彼は意外にも楽しそうだったのがとっても不思議だった。
「暫く僕は出てくけど、絶対に」
「部屋から出てくなでしょ?知ってる知ってる。お土産期待してま〜す」
「ホントに実家みたいに寛ぎ始めてるじゃん」
「夢のような暮らしを送れて最高。このままじゃ永遠に出て行けな……もしや君、図ってやったな」
「いや僕もここまでリラックスしてもらえるとは夢にも思わなかったよ」
怠惰の限りを尽くせて満足です。
彼はじゃあねと手を振って、いつものように瞬間移動で消えた。
いなくなっちゃった〜とごろんと寝返りを打ち、ふと部屋の奥にある玄関を見る。
…………あれ?鍵が掛かってない。
いつも掛かってた南京錠。ゴッッツイ鎖とともにくっ付いてた筈なのに取れてる。
少し考えて、彼との連絡用に貰ったスマホを手に取った。
これで通報すれば一発だと思うが、彼が可哀想だからサツを呼ぶことは止めてあげている。決して餌付けされて絆されたからとかそういう理由ではない。
電話帳に一つだけ登録されたそれをタップし、耳に当てる。数秒で彼は出た。
『どうかした?』
「もしもし悟お坊ちゃま。君ってば警備が甘過ぎの甘ちゃんだぜ。せっかく付けられた南京鍵が地面とコンニチハしてますがな」
『え、ホント?最近触ってなかったのに変だな。
………もしかして、弄った?』
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sou(プロフ) - はじめまして!!読み始めたばかりなのにもうこんなにも進んでしまいました!!基本的に夢小説でのギャグ系苦手なのですが、こちらすっごく面白くて!!これからも最終章行ってきます! (2022年2月11日 16時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
巫礜 - 2章完結おめでとうございます!!とても面白くて一気に読んでしまいましたー!3章も楽しみに待ってます!無理せず頑張ってください!応援してます!! (2020年11月29日 23時) (レス) id: af56b806d8 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 完結おめでとうございます!今回も楽しく読ませて頂きました!展開に置いてかれる悠仁がちょっと面白かったですw3章も楽しみにしてそれこそ犬のように待ってます!! (2020年11月29日 13時) (レス) id: c55596aced (このIDを非表示/違反報告)
呉羽(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!いつも通知が来るたびワクワクしながら開かせてもらってます。これからも応援してます!では、お体に気を付けて。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: cfabc7c0e0 (このIDを非表示/違反報告)
レミリア(プロフ) - 第2章の完結おめでとうございます。いつもはぁはぁ息を荒くしながら見させて頂いております(キモい)第3章も楽しみです! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 0a87aae102 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nny。 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月23日 1時