愛を謳え【刀剣乱舞】 (ページ8)

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貴方だけがページ8

夕餉時、薬研藤四郎は、あまり箸が進まなかった。

大好きで大好きで、愛してやまない童子切の好物が前にあるのにもかかわらず、表情も暗いままだった。

「薬研、お前の気持ちも私達は痛いほど解っている。だけどね、あの方も、童子切も仰っていたでしょう？『食べて寝て笑いあえば、鬼でさえも怖くなんてない。』、と。鬼を斬った童子切が言うのですから間違いないでしょう。だから、一口でいいから食べなさい？』

「それに、今日は童子切さんが好きなものばっかなんだぜ！ほら、童子切さんが一番好きな天麩羅やるから、元気出せよ。」

兄弟に勧められ、渋々箸を取り、天麩羅を一つとった。

ゆっくりと口の中へ放り込む。
口に放り込んだのは茄子の天麩羅だった。

『畑仕事お疲れ様。

汗をかいただろう？それに泥だらけにもなったはずだ。

湯を沸かしておいたから、湯浴みしておいで？

おやつを準備してるから、ゆっくり入っておいでよ。』

いつの日か、自分達に料理を振舞ってくれた童子切の声が脳内に響く。

薬研の藤色の瞳から、涙がこぼれでそうになった。

次に月下美人が入った中華卵スープを口にする。

何時の間にか薬研は大粒の涙を流しながら飯を頬張っていた。

茸入りの炊き込み五目御飯を思いっきり口へ放り込む。

薬研はその場から早く去りたくて、食べ物を口に全て入れた後、食器を其の侭にしてその場を去った。

着いたのは童子切が眠っている部屋。

薬研は中に入ると童子切の胸に抱きついた。

「なぁ童子切の旦那。俺は、俺っちはあんただけがすべてなんだ。

もう俺っち、まてねぇよ…。」

そう言ってより強く童子切の躰を抱き締めた。

窓からは黄金色の月明かりが差し込み、優しい草花の香りが漂っていた。