二人が一緒に歩く方法【YG】 (ページ28)

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そして、コロナウィルスはやってきた。

準備していた大きな絵を書くためのキャンバスが、

目の前で、

ポロポロと崩れていくような喪失感。

俺はなぜか、予定していたスケジュールの多くが失われたことに対して、不思議なくらい焦りは無かった。

かなり急いで走りすぎていたから、強制的なブレーキに安堵したってのも、あったかもしれない。

でもこの大きなうねりに巻き込まれた世界は、以前とは違っていくんだろなって、漠然と感じていた。

入っていた仕事がなくなると、ぽっかりと時間が開くことがちょくちょく増えて、俺は家の中で一人取り残されるようになった。

最初から俺しかいないんだから、取り残されるって言い方は妙かもしれないけど、今までぐいぐい引っ張る何かから急に手を離されて、ぽつんって、迷子になる感じ？

上手く言えないけど、どこにも帰れない、って気持ちが一番近いかもしれない。

だから、ふらっとAに会いに行った。

そんな気軽に行けるくらい、時間に余裕がある自分が、少し面白いと思いながら。

「よう。儲かってるか？」

『それが、聞いてくださいよ。大繁盛ですよ。在宅時間増加の逆境が楽器購入者倍増の追い風でガンガン来すぎて、在庫が端から消えていくんですよ！』

「せめてもう少し、久しぶりに会ったね感だして」