TH-2 ページ15
「！！！？？」
ヒョンの手を握った手が、力一杯握り返されて、すごく、痛い。
ヒョンは見開いた目で俺を見て、ゆっくりと視線を動かして、控え室を見渡した。
YG「…テヒョン、何？」
何事もなかったみたいに聞かれたけど、俺はただ驚いて、返す言葉を思い出せない。
あんなに幸せそうに笑っていたヒョンが、明らかな失望と、悲しみに項垂れていくのを見て、俺は声をなくした人みたいに黙ってじっと、ただヒョンを見つめてしまった。
YG「…あー、撮影か…俺の番、すぐ？」
首をふる。
ユンギヒョンも、すぐに自分が1番最後だったことを思い出したのか、やっと俺の手を離して、それから。
YG「あとでちゃんと、いくから、少し一人にして」
そう言って、部屋から俺を追い出した。
それから俺は、ユンギヒョンから目が離せなくなった。
仕事中も、食事中も、寝てる時も、自然とユンギヒョンに目が行くもんだから、自然と気付いてしまった。
去年まであんなに気にしていたスマホを触らなくなった。
電話もほとんどしないみたい。
起きていられないのか、時間があったら目を閉じて、
現実世界から、逃げるみたいに眠ってる。
ヒョン、俺それ、わかるよ。
自分の内側に、
どうしようもないくらい辛くて、
悲しくて、
でも簡単には口に出さないものがあると、
すっごく、眠くなるよね。
きっと俺よりも強いヒョンは、その内勝手に自分を宥めて、勝手に元に戻ったような顔をするんだろう。
でも、今度ばかりは。
そうやって、なかったことにしてしまうのは、ヒョンにとって良く無いような気がする。
上手く言えないけど、このままだとユンギヒョンの心が、濁っていってしまうような、そんな危機感を覚えた。
俺は静かに、自分に何ができるのかを、考え始めた。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2022年12月3日 8時
