地上の楽園 -に- 【JK】 (ページ3)

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フィリップさんと遊んでいると、

ドン

と内臓をたたくような大きな音がスピーカーから流れ出し、リハーサルが始まった。

こうなるともう会話はできない。

フィリップさんは手を振るジェスチャーで、持ち場に戻って行った。

会場全てに届くほどの音は、至近距離では音そのものが支配者のようになる。

至近距離の声も、足音も、物が落ちる音さえもかき消されて、その音の存在しか許されない空間。

『…王、だよね』

ぼそ、と言った言葉さえ、思考は頭に残るのに、音そのものは自分の耳にも届かない。

強烈なまでの支配力。

その場の音全てを平伏して、君臨する

輝かしく、煌めく音

その、声。

メンバーはいつもリハーサルはさらりと流すところ、ジョングクさんはのどの調子を確認するように全力で歌っていた。

私の位置からステージは見えないが、よく通る声が気持ちよさそうだ。

鳴くように、高く細く引き絞るハイトーン。

鳴るように、響かせるビブラート。

お陰様で他に何も聞こえない。
心地よく鼓膜と脳を支配されて何も考えられない。

『…ほんと、すごい声』

私は特にメンバーのペンというわけじゃなく、彼らのことはスタッフをしているから、聞いている、知っている。

だからどれだけ素晴らしいアーティストなのかわかっていて、尊敬している。

そして、天上からの声は、きっとこんな声なんだろう。

そう思うけど。

どれだけ良い声でもこんな音量で聴かされていると。

仕事で毎日聴いていると。

どれだけ影響力のある王の声だろうとも。

『まあ、慣れるよね』

私自身、実のところ…メンバーには全く興味はなかった。