地上の楽園 -に- 【JK】 (ページ2)

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「リハーサルが始まります、スタッフは一旦舞台から降りてください」

イヤホンにディレクターから声がかかり、舞台のセッティング確認をしていた大道具スタッフがゾロゾロと動き出す。

私も例に漏れず波に乗って舞台そでに戻ると、

FP「A助けて」

名前を呼ばれて振り返った。

大道具のチーフ、フィリップさんがセットの間に挟まっていた。

何をしてるのかと近寄ると、アメリカ人のフィリップさんは2mの長身を精一杯縮こませて、骨組みの立て付けの間に腕を差し込んで、一生懸命手を伸ばしている。

『何か落としたんですか？』

FP「うん、ペンがすっ飛んでいったんだけど、俺の腕が太すぎてこれ以上入らない」

はは、と思わず笑うとその大きな体に下がってもらい、腕を差し込んで拾ってあげた。

『キャップに紐でも通したらどうですか？』

FP「紐長くないと書きにくいんじゃ無い？」

『伸び縮みするホルダーのやつ、どこかにあったような…』

探してきましょうかと言うと、フィリップさんは手を振って断った。

FP「いいよ、今度自分で探す」

そして、にやり、と笑って私の頭をポン、と叩いた。

FP「ところでAは風邪でも引いてるのかな？」

にやにやしながら、もう何度目かもわからない、面白くない冗談を言う。

私の声は女性にしてはかなり低く、しゃがれて、まるで風邪をひいて喉をやられているような声だ。

フィリップさんは初めて会った時からそれを面白がって、毎日からかってくる。

いい加減にしてほしいと思いつつ、飽きずにずっと続ける粘り強さに関心さえ覚えてきている。

『またそれ…いい加減飽きて下さいよ、元気です。地声です。生まれた時からこの声です』

私も、もうお決まりの言葉で返す。

FP「OMG！！」

そう叫んだフィリップさんは大きな目が無くなるくらい細めて、ワハハと笑う。

だから、何がそんなに面白いんだか。