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「そんな泣かないで。働いてみたら意外と天職だったり………あれ?」


相変わらず無責任な言葉で慰める男が、私の涙をメガネの隙間から指を入れて掬い始めたと思ったら、急に言葉と指を止めた。


まじまじと私の顔を覗き込んでくるが、私にはその顔が滲んで殆ど見えない。
そう言えばNo. 1ホストだと言われていた。きっと端正な顔をしているのだろう。



「おまえ、もしかしてガリ勉?」



さっきまでとは違い、ワントーン低い声で問いかけてくる言葉に私の涙が止まる。
ガリ勉、聞き馴染みのある嫌なあだ名。



それは確かに高校生のときの私のあだ名だった。
しかも、殆どひとりにしか呼ばれていない。



メガネを外し、ごしごしと手のひらで涙を拭き、視界をクリアにして目の前の男をじっと見る。
なんとなく見覚えのある顔に、じわじわと記憶が蘇る。
ああ。恐らくそうだ、確かに面影がある。



「玉森くん?」



震える声で名前を呼ぶと、眉間に皺を寄せて「そうだよ」と呟いた。




「知り合いですか?」


田中さんが、私と玉森くんの顔を見比べて怪訝な表情で聞いてくる。



「あー、高校の時の同級生」



「マジすか」



玉森くんが心底気怠さそうに答えた。
さっきまでの態度と全然違う。
けれどもこっちの方が私の知ってる玉森くんだった。



「おまえ何してんだよ、バカじゃねぇの?」



私は何もしていない。巻き込まれただけだけど、その状況をバカだと言いたいのだろう。



「こいつの勤務予定先どこなの?」



「2号店のほうです」



「やっぱり?最悪じゃん」



あー、と唸るようにして頭をガシガシと搔きむしる。
ずっと私の前でしゃがみ込んでいたのに、急に何かを思い立ったように立ち上がった。



「ちょっと時間ある?そいつ連れて俺の家来て」


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ちあき(プロフ) - yk717miraiさん» コメントありがとうございます。私が書いたお話にそこまで感情移入してくださって嬉しいです(〃ω〃) (2019年8月12日 11時) (レス) id: e4fa195aef (このIDを非表示/違反報告)
yk717mirai - 捨てて行った家族にバチが当たればいいのに。幸せになるべからず!! (2019年8月12日 6時) (レス) id: 2f50dbd382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちあき | 作成日時:2019年8月11日 21時

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