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「お前なァ、腐っても妙齢の女なんだからちったァ危機管理したらどーだ」
「危機管理はしてます、ほら」
ちらりと見せたのは懐に忍ばせた短刀である。
私はこれでも武家の生まれだ。その繋がりで志村家のお妙ちゃんや新八くんとは長い付き合いで、坂田さんと知り合ったきっかけもそこ。
つまり、一通りの護身術は幼い頃から仕込まれている。
もしも良からぬことを企むような人間に遭遇したとしたら、きっと私は微塵の躊躇もなくこの刀を使うことができるだろう。よって、夜道を一人で歩く程度ならば問題ない。
私の回答に坂田さんは不満げながらも口を閉じてくれたようだった。彼はぐうたら侍だけど、やさしいひとでもある。さして深くもない付き合いの中でもわかるそれに口もとを緩ませながら、湿った空気に音をのせた。
「坂田さんはどうしたんですか、こんな夜中に」
「さっきまで飲んでたんだよ。ちっと酔い醒ましに歩いてんの」
「飲み過ぎると新八くんたちに怒られますよ」
「残念だったな、今日はガキどもいねェんだよ。お陰でハメ外して飲み過ぎちまった」
確かに言われてみれば彼からは仄かにアルコールの匂いが漂っている。普段はあまり得意ではないと感じるそれだけれど、どうしてか今は気にならなかった。
と、「お前は眠れなくて散歩、だったか」なんて坂田さん。
「そうですよ。エアコンが故障中なんです。とても寝付けなくて」
「あっちーもんな。そんで眠気はやってきそーなの？」
「今のところ気配もないです」
「ダメダメじゃねーか」
お酒が入っているせいか、今日はツボが浅いらしい彼がゲラゲラ笑う。私もつられて笑ってしまった。
突如夜道に溢れた笑い声を皮切りに、気温への文句やら仕事の愚痴やら、他愛ない話をぽつぽつと交わしていく。身体にまとわりつく湿った温い空気を、その間だけは忘れていた。
そして、世間話に一旦区切りがついた頃。忘れかけていた川の音の上を、「そろそろ帰るか」坂田さんの声が泳いだ。
「……帰るんですか？」
「俺が帰るっつーかお前が帰れ。そろそろかぶき町帰りのジジイどもがうろつき始める時間だろ」
「大丈夫ですよ」
「清々するほど根拠がねーな」
いつも物分りいいのにどーした、と。
どうしたもこうしたもなくて、私の気持ちは只々単純だ。つまるところ、
「まだ帰りたくないなって」
坂田さんが息を飲んだ。気がした。
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いたる(プロフ) - 最高に面白いです！文章もすらすら読めるし銀魂のキャラクターがめっちゃいきいきしてて、すごく読みやすかったです！ (2022年3月19日 18時) (
レス) @page35 id: 2538ecda96 (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - 笑子さん» 私の方こそコメント通知を発見した時の私の喜び！って感じです(;_;) 亀更新で好き勝手書き散らかしてますがそんな風に言っていただけて本当に幸せです。笑子さんのことを笑顔にできるようなお話めざして精進します…！笑子さんもお身体にはお気をつけくださいね！ (2021年4月27日 12時) (レス) id: 662e82697c (このIDを非表示/違反報告)
笑子(プロフ) - 更新通知を発見したときの我々読者の喜び…！！いやほんと、下の方も言っていますけど泣きそうでした。中村さんの書く銀魂ワールドが大好きです。また更新を待ちながら過ごすことが出来ると思うと、本当に嬉しいです。色々と大変なご時世ですので、お体ご自愛ください。 (2021年4月3日 15時) (レス) id: c15918936c (このIDを非表示/違反報告)
なかむら(プロフ) - ろあさん» 作品ページ拝見して(きもくてすみません汗)気づいたのですが、お名前変えられたのですね!! 覚えて頂けていて、またお会いできて本当に嬉しいです。1番なんて恐れ多いですが…でもそう思って頂けてとっても幸せです。ろあさんもご自愛くださいね！ありがとうございます！ (2021年3月5日 12時) (レス) id: cefa07e7cb (このIDを非表示/違反報告)
ろあ(プロフ) - 久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて泣きそうになりました、、！中村さんの銀魂小説が1番大好きです！同じ話を何回も何回も読み直してます ！某ウイルスや寒暖差に気をつけて、リアルの方も大変かと思いますが応援してます！ (2021年3月4日 12時) (レス) id: 00e13ca19d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2017年12月30日 18時
