色恋 ページ20
それはどんなものでしょうか、と彼女に向き直って続く言葉を待っていれば。
「――――まぁ、なんて言うか・・・相手を必要だと思う、みたいな感じ・・ッスかねー・・」
「必要?」
「・・・何より大切だと感じたりもそうだと思うッスよ。・・あ、でも崇拝とか尊敬ともちょっと違うし・・・」
「大切・・」
「一緒にいたいと感じたり不意に意識したり、そいつ相手なら何されてもいいって感じたり・・。依存とかにも近いかもしんないッス」
あー、と右手で頭を掻いて視線を宙にやった来島さん。・・・・かなり、困らせてしまってるらしい。
(・・悪いこと、してしまったかもしれない。)
「・・・あの、」
「――――あ、でも今まで誰かに惚れたこととかないんスか?」
もう大丈夫です、と私が発しようと口を開けば、それに丁度被さるようにして来島さんがそう言った。
・・・・・・・惚れる?
「・・・ない、と思いますよ」
だって何より大切で必要で、一緒に過ごしたいと思ったり不意に意識してしまったり、半ば依存に近い情を抱いたことのある異性なんて。
おまけにその方相手なら何をされてもいいだなんて、そんなことを思える人など中々―――・・・あれ。
(――待って、なんだか。)
なんだか、違和感を感じる。
“そんな相手は今まで一度もいなかった”と。“誰かに惚れてしまったことなど一度もありはしない”と。―――そう言い切ることに、何故だか躊躇ってしまう。
(・・・何故・・? だって、私は・・、)
――何より大切な人、なんて。
――一緒にいたいと思う、人なんて。
――依存、なんて。何をされてもいいだなんて。
(・・・・・・思って・・・いない・・?)
本当か、それは。そんなことを思った相手がいないなんて、本当?―――否、そんなわけがない。
・・・何故今の今まで頭に浮かんでこなかったのか謎だ。無意識のうちに気付かないようにしていたのかもしれない。・・・だけれど。
・・だけれど今。今この瞬間。私は気づいてしまった。――だって、そうでしょう?
(・・大切で、何をされてもよくて、依存している。)
――――そんなの。そんなひと。
(・・・――高杉さんしか、いないじゃない。)
未だ私の目を見つめて返事を待ってくれている来島さんへ、苦笑を返し。
思わぬ新事実への動揺を隠すように手を握りしめたのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時