百八十五話 ページ37
Aside
思えば昔から、あたしは母さんに抱かれた記憶と言うものがない。
そっと撫でられた記憶すら。
人間の記憶は古いもので大体三、四歳のものから残っている。それ以降の物は忘れてしまうのだとか。
あたしが覚えている限りで一番、家族らしいと言う記憶はたった一つ。
たった一度、母さんに言われた言葉のみ。
お前はヒーローになっていいんだよといわれた言葉。それもつい最近まで忘れていた。
気が付けば、ご飯を用意されないときがだんだんと増えていった。
用意されてもすぐにあれ？という感じで片付けられてしまう。
それがいつになるか分からないからなるべく急いで食べた。急いで食べても用意される日が減るに連れ、食が細くなり食べられなくなっていく。
クリスマスや誕生日の時プレゼントはなかった。
クリスマスの時、いい子にしかプレゼントは貰えないと知っていい子じゃないからなんだと幼いながらに理解した。
だから、なるべくいい子になろうとした。
勉強も全てにおいて頑張ったし、運動も頑張った。
兄さんがいじめられていたら助けたりして何でも出来るいい子。
只、愛されたかった。
兄さんみたいに。
兄さんみたいに抱き締められたかった。欠片でもいいから心配して欲しかった。
一度でいいから、お腹一杯母さんの作ってくれたご飯を食べてみたかった。
何も要らないから。
いい子にしてるから。
個性だって要らないから。
なんなら無個性になってもいい。
部屋には学校から支給されるもの以外、いつも何もなかった。
なるべく、掃除は自分でやった。
お手伝いは出来るだけやった。
それでも何も与えられなかった。
何が足りないのか。
いつも必死だった。兄さんとあたしは何が違っているのか。
どう在ればよかったのか。
あたしは只、母さんに視て欲しかっただけなのに。抱き締められたかっただけなのに。
何故、こうも兄さんと違うのか。
淡い望みすら叶えてはくれないのか。
迷惑かけないようにしてるのに。いい子になれてない？じゃあ、これ以上どうすればいいと言うの。
そして、あの日から１２年が経っていた。
あたしは何も変わっていなかった。バケモノも相変わらず。只、変わったのは大切な人が出来たということ。
欲が出てしまったこと。
好きになってしまった。
母さんばかりでなく、あの人からも愛されたいと望んでしまった。
何が足りなかったのか。
それは今もまだ、理解できないことだ。
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ミナミ(プロフ) - 今井 明希さん» ありがとうございます！続編もこれからもよろしくお願いいたします！ (2020年2月12日 22時) (
レス) id: 4b9f084e7b (このIDを非表示/違反報告)
今井 明希(プロフ) - 面白いです！最新がんばってください！ (2020年2月12日 0時) (レス) id: d714c1a6ae (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 読んでくださってありがとうございます！背景ちょっといつも考えていたので気づいてもらえて嬉しかったです！これからも頑張るので宜しくお願いします！ (2020年1月29日 22時) (レス) id: 4b9f084e7b (このIDを非表示/違反報告)
メガネザル - 面白くて一気に読んじゃいました！ 更新頑張ってください！応援しています(*´▽｀*) (2020年1月28日 22時) (レス) id: 7074a2782f (このIDを非表示/違反報告)
みけねこ - 続編応援してます！これからも頑張ってください。毎回、後ろの背景?が変わって何かワクワクしてます(語彙力がない) (2020年1月28日 21時) (レス) id: 717af831f6 (このIDを非表示/違反報告)
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