九十一話 ページ43
緑谷side
僕は兄らしい兄ではなかった。
十年程前。
Aは無個性だったと発覚した僕を励まそうとしてくれた。必死になってくれていた。僕でもヒーローになれると。
Aの個性は強個性。
当時の僕は羨ましくてしょうがなかった。僕の持ち得ないモノをAは持っていた。
ヒーローに似合っているのはAだった。
なのに、僕はAを追い返したんだ。
お化けみたいな個性だと。成れるわけがないのにバカにするなと。
実際、そう思った。
Aはそのあと、どうなってたんだっけ。僕の目の前から走り去ったのは覚えている。
でも、あの日から確実に僕たち家族の中からAと言う存在が薄れていった。
気が付けば、僕も母さんもAの事を忘れていた。僕も母さんも忘れないようにしていた。Aの事を。
でも、あの日から僕たち家族の写真からAがいなくなった。
今、Aの事を考えられているのは……多分、Aが意識を失っているから。
Aが寝ている間や意識がないときは、Aの周りへの個性の影響が薄れていくらしい。あの日、僕に無個性と診断した医者はそう言った。
それでも、Aの個性は年々強くなっていた。
寝ている間や意識が無いときですら、覚えていられなくなった。
もう、あとどのくらい僕がAの事を覚えられているのか分からない。
どうすればいいのか分からない。
Aを忘れたくないのに、どうしても無意識のうちに忘れてしまう。
Aはそんな僕と母さんをいつも許してくれる。
でも、あの日からAは笑わなくなった。
Aの笑った顔をもう何年も見ていない。母さんも、ずっと悩んでいた。
どうすればいいのかと。
なにが原因なのかは分からない。
僕のせいなのか。それとも、あの日にあの事以外にAを変えてしまった決定的な何かがあるのか。
僕はどうしたらよかったのかな。
あの日の事を謝りたいのに………僕はAと話せもしない。
Aを守りたいのに、Aはどんどん強くなっていく。女の子なのに。
助けなんて必要ないとでも言うかのように、強くなっていく。
今回もAを守れなかった。救えなかった。助けられなかった。
A。
ごめん。
謝って済むことじゃない。分かってる。許しを乞っている訳じゃない。
只、ごめん。
A。
頼むから、頼むから無事でいて。生きていて。
僕にもう一度、君と話すチャンスを……。
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すぐる - 50話の「応用が利く」のところが「応用が聞く」になっています。細かくてすいません🥳 (2023年1月12日 0時) (
レス) @page2 id: a8ac25d13a (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴,,, - この作品のおかげでサーを推しはじめた (2022年12月27日 1時) (レス) @page4 id: e85af83036 (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 轟の成長みたいな感じですか？ 母が言っていたセリフも似ていますよね！ (2022年7月28日 20時) (レス) @page20 id: 279e5ec09b (このIDを非表示/違反報告)
たむたむ - ミリオの個性は通過じゃなくて透過だよ (2021年10月11日 22時) (レス) @page2 id: 124affbb66 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 脱線脱出tomorrow さん» ありがとうございます！これからもよろしくお願いいたします (2019年12月11日 4時) (レス) id: 4b9f084e7b (このIDを非表示/違反報告)
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