二百五話。 ページ6
Aside
「警察やヒーローには知らせなかったのかい？」
「一応、脅されてたんで。
病院から出られない弟もいましたし、それに両親が殺されてしまったから、言うことを聞くしかなかったんですよ。
でもまさか、こんなことになるなんて思ってなくて。」
警察もヒーローもあの親が死ぬ前から、ずっと信用なんてしていなかった。
ヒーローなんていないことを知っていた。
逆らう気もなかった。だって、お金をくれると言った。私達を助けてくれると。それがどんなに救いだったか。きっと誰もわかりやしない。
でも、それは言葉にはしなかった。
私は今、この人たちを騙しているのだから。
「…オール・フォー・ワンはなんと言ったんだい？」
「逆らえば弟の命は、ないと。個性を私にくれるなんて言ってきましたね。
その当時は無個性だったので、たぶん、漬け込もうとしたんでしょうね。断りましたけど。」
握りしめた手を左手で撫でて、食い込んだ爪の跡に触れた。微かにひりっとして握りすぎたらしいことを理解した。
早く終わらないだろうか。
オールマイトは嫌いだ。ヒーローも嫌いだ。まともなやつはいなかった。
ひょっとしたら、本物もいるのかもしれない。
そう思うようになっても、きっとここには、私のところには、来ないだろうと思う。
だって、知っている。
何度もされた拒絶を。
私を見てくる憐れむような目を。
狂っていると言い続けた報道を。
助けというのは、私以外の誰かに施されるものだと理解している。私にとってはそうだ。
きっと、助けてもらえるのは善人だ。
陽太は私がいるから助けてもらえないのだ。いつだって申し訳なく思っている。
善人にはなれないけど、いなくなることはできる。だから、もう少し待っていてほしい。
きっといなくなるから。
「助かったのさ！
聞きたかったことは以上だよ、ありがとうなのさ。疑ってしまって悪かったね。」
「いえ、私も黙ってたので。」
そう言い、頭を下げて相澤先生について校長室を最後にした。最後に見えたあの人たちの感情は確かに憐れみだった。
憐れむという感情が悪いというわけではない。
ただ、その感情が私は苦手だ。
憐れみから始まる救いもあるのだろう。どんなものも、可哀想だという思いから始まったりもするのだ。それはわかっている。
可哀想な人間だという事実を飲み込むには、時間がかかるのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 457人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫(プロフ) - 凄く面白いです！！更新されるたびワクワクしていました(*´ ꒳ `*) (2022年1月23日 0時) (
レス) @page14 id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
hgf、jhさいこうでs - 最高です‼️何回も読み直しています！続きが楽しみです。。。ああ、早く夢主ちゃんを救って欲しい。。。 (2022年1月21日 20時) (レス) @page13 id: 9afd2abc65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
