雪柱は愛欠乏症

悪夢 ページ1

『お母さん、お腹…減った。』

私はきらびやかな衣装を着る母を見上げ、そう言った。
だが、母は反応しない。

聞こえてなかったのかな？

『お母さん？…何か、食べ物…』


そのときだった。

パァン！という音を立て、母に頬を打たれる。

頬がジンジンと痛む。


『？…？…』

まだ状況をうまく理解出来ない私に向かい、母は言った。


『お母さん？貴方は私の子供じゃないわ！
　私は貴方を産みたくて産んだんじゃない！汚らわしい！』

目を吊り上げ、こちらを睨む母に、私は目に涙を浮かべる。
　

するとそこへ、父がやって来た。

『お父さん…』

父は私をチラリとも見ることなく母の側に行くと、母のお腹をさすりながら言う。

『だめじゃないか、安静にしていておくれ。
　お前のお腹には子もいるんだからな。』

『えぇ…そうだったわね。』

にこやかにそう言う父。
まるで私がいないかのように振る舞う。

『お父さん…』




『……違う……』





『え？』


『お父様と呼べと何回言えばわかる！？
　役立たずのお前に父と呼ばせてやるだけでもありがたいと思い、私に敬意を払えといつも言っているだろう！！』




いきなり父が怒りだす。
部屋に父の怒声が響き、震える。

『ご、ごめんなさい…』



『ふん…これから大事な会合がある。
　お前は間違っても出てくるんじゃないぞ。
　恥さらしが…』






《恥さらし》

《役立たず》

《私の子供じゃない！》









ーーーごめんなさい。


役立たずで、恥さらしで、ごめんなさい。

生まれてきてごめんなさい。


ごめんなさい、ごめんなさい、



ごめんなさい…許して下さい…

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