転移 ページ1
私は櫻木A。
普通の平凡な高校生だ。……いや、だった。
『………なんだ、ここ。』
目を覚ましたら、目の前には自然ばかり。
昨日はいつものように学校に行って、いつものように帰ってきて寝たはずだ。
部屋の中にいるはずが、なぜこんな場所にいるのか。
『色々考えたって答えが見つかるわけないし、とりあえず周りを見よう』
パッと見渡すと、木や花でいっぱいだ。
山の中なのだろうか？人はあまり居ない。
これじゃ助けを求めようにも何もできないじゃないか。
「うーん」と困り果てて居ると、後ろから足音が聞こえる。
____人だ！！
勢いよく振り返り、足音の鳴る方へと走った。
？「わあっ！！…お、女の子？どうしたんだい、こんなところで…」
足音の主は、背中に籠を抱えている優しい声色のお婆さんだった。
『あ、あの、私いつの間にかここに居て、それでえぇっと…』
？「嬢ちゃん、取り敢えず落ち着いて。話はゆっくり聞くさ」
お婆さんはこんな山中に居た怪しい私を怪しむことなく、優しく声をかけてきた。
なんて優しいお婆さんなんだ……。
彼女の声に段々と落ち着きを取り戻した私は、ゆっくりと事情を話し始める。
『私、櫻木Aと言います。あの…ここがどこか分らなくて。教えてくれませんか？』
he「私はヘレーネ。ヘレーネ＝ヴァルザーさ。ヘレーネでいい。ここはファラク村の外れにある山の中だよ。」
『ファラク村…？』
he「この近くに村があるんだ。私はそこに住んでいるが…知らないのかい？」
『はい。…聞いたこと、ありません』
ファラク村なんて名前、聞いたことがない。
どれだけ調べてもきっと日本にはない。
『あの、日本って聞いたことありますか？』
he「ニホン？…うーん、聞いたことないねぇ。どこかの地名かい？」
『っ…いえ、聞いたことがないなら大丈夫です。』
聞いたことがない…？
もしかして、ここは日本ではないのか？
というか私……転移してる？
日本に居た時に、そんな漫画を読んだことがある気がする。しかし、実際に起こるなんてあるはずがない。
he「…本当に大丈夫かい？嬢ちゃん」
『え、あ、はい。大丈夫…………じゃ、ないかもです。』
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作者名：相羽ノア | 作成日時：2023年3月18日 17時
