8 「初心忘れるべからず」 ページ8
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そこからトントン拍子に話は進む。
ぼくは妹と一緒にお金を貯めた。朝ごはんも昼ごはんも我慢してお金を貯め、そしてカメラを買った。安いカメラだ。その安いカメラを家に気付かれないように設置して──家はいつでも汚かったから簡単だった──虐待されているシーン以外を切り取るなんてことはできなかったから、すぐに容量はなくなったけど。
ぼくらはそれを持って、二月の二十九日、ちょうど
ぎょっとした顔の警察官が、カメラの映像を見て息を呑んだ。それからぼくらを見て、「気付けなくてすまない」と平謝りして来た。謝られるのは苦手です、と言うと、ただただ頭を撫でられた。ぼくはまた泣いた。ぼくが泣くのは人生の転機だけである。
ぼくらはすぐに施設に入れられた。たった一人の妹なんです、と言うと、離れ離れになんかならないわよと保母さんに言われた──二人は逮捕されたそうだが、そのあたりの報道は施設では全く見られなかった。現在、ようやく自分でインターネット等で調べることによってそれを確認できている。
里親もまた、すぐに見つかった。まだ待っている他の人がたくさんいるのに、何故だかぼくらだけ申し訳なくなった──のだが、実はその里親、あの日声を掛けて来たクラスメイトの両親だったのである。
これは流石にぼくもびっくり。義理の兄妹となったワケである──歳は彼女の方が上で、ぼくにはお姉ちゃんができた。たった一人の妹と、たった一人の姉ができた──こんなに幸せであって良いのかと、本当に思った。
父が死んだという訃報は、流石に虐待されいたぼく達にも届いた──飲酒運転で死んでしまったらしい。葬式にはいかなかった。ぼくらが行く資格はない。彼がぼくらを見捨てたよう、ぼくらも彼を見捨てたのだ。
それから、それから────。
たくさん、あった。今までのぼくの人生は何だったのかというほど、毎日が色濃く、強烈な印象を残して過ぎ去っていく。結局それは、未来のぼくは覚えちゃいないだろうけど、幸せな日々だった。不幸な少年が、よくいる青年へと変貌していったのだ。
これで、少なくとも、ぼくの波乱の人生は終了を迎える──これからは円満に平凡に、生きていく。それは確定している未来だ。
しかし、皆さん一つ、忘れてやいないだろうか。
これはぼくが、玄関をノックするまでの話だと。
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白夜の世界(プロフ) - 鯉泉さん» わざわざ……！？ありがとう御座います！！コイツ本当によくわからないんですけど、自分が内側にいたら迷惑だってわかる脳があります。それもかなり幼少からなので、それをなんとか喰らい切って断ち切ってもらいたいなーと(笑)。 (2021年5月27日 19時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
鯉泉(プロフ) - 『集団の外にいる人,部外者』という意味らしいですね。とてもぴったりだと思います。この少年が、戻れますように。この作品が多くの方に知られますように。お身体にはお気を付けてください。これからも応援しています。 (2021年5月27日 7時) (レス) id: 1ee11e7988 (このIDを非表示/違反報告)
鯉泉(プロフ) - 「できた芝居は好きだ。できない本音を隠してくれる。しかし少なくとも、ぼくにそんなことを指摘してくれる人はいなかった」、というのがとても心に響きました。白夜様の作品はどうしてこんなに心に響くものが多いのだろう…アウトサイダー、調べました。 (2021年5月27日 7時) (レス) id: 1ee11e7988 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - いくまさん» コメントありがとう御座います〜〜！自分も文字数超えてしまうことはよくあります(笑)。その度に書き直したり書き加えたり消したりしてます……コレの最終話もホントはもう少し書き加えたかったんですが、無念、といった感情です(笑)。 (2021年4月7日 12時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ただただ素晴らしいの一言でした。字数超えてしまいすみません笑二次創作の方もずっと応援してます。過去作品もすぐ読んでしまいましたし、陰ながら大ファンです。これからも素晴らしい作品を書き続型下さい、、！！ (2021年4月6日 21時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2021年4月4日 17時
