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先程、文を届け物に出して帰ってきた
俺達は北さんに使うように言われた部屋に向かっている
廊下がみしみし、と音をたて、降り出した雨と共鳴する
余り風流ではないが、とても面白い音を奏でている
廊下が囲むのは、小さな池
池の中には鯉と金魚、亀もいる
色んな奴等が入り乱れた遊郭みたいに見える
鯉が俺達に向かって餌を強請るのが
俺達で言う、客引きのようだった
俺の後ろにはさむつむが話しをしながら着いてくる
双子っていうのはおしゃべりなんだろうか
今まで話しが途切れた事は無かった
流石の朝日奈と時雨もあそこまで長続きはしないだろう
俺と片桐だったら喋っていられそうな気がする
何となく。
…俺達に兄さんがいた時も後ろでわいわい話したっけ
歩き疲れて眠くなった時はおぶって歩いてくれたなぁ…
なぁ、鉄郎。懐かしいなぁ
あの人はあの人と幸せに慣れたかな…
形見のように簪をくれたけど、もう会えないのかな
幼少期はもっと可愛げのある喋り方で
可愛い可愛い言われて育って来たが、
ある程度育つと恥ずかしくなり
今のような喋り方になったAであるが…
時々、昔の喋り方に戻るらしい
本人曰く、気ぃ抜いてるからだろ…
と余り興味なさげ。(片桐談)
『ねぇ、さむつむ。あとどれ位で着くの?もうすぐ着く?』
いきなりの可愛らしい喋り方に驚き固まるさむつむと
二人の反応に、…またやらかした とAは唸る
「もうすぐで着きますよ」
「ところでAさんさっきの喋り方なにー?どないしたのー?」
にやけながら聞いてくる所を見るとつむは命がいらんらしい
『遺言はそれだけだな…?』
「はい…?」
『よぉし、歯ァ食いしばれ』
「ちょお待ってくれやAさんて『そおれ!』ぎゃあああああああああああああああ!」
「」「北さんの殴りより痛かったらしいです」
『ごめんなさい、やりすぎた、反省はしてない』
「「してないんかいっ!」」
『なんだ喋れるじゃん、立って。ほら歩くよ早く』
「ち、ちょっと待ってくれAさん!あんた思てたより鬼畜やな…!
わああああああ悪い悪い引き摺らんといてや!」
「やりますねぇ、Aさん。その調子でお願いしますよ」
通りすがりの北さんに声を掛けられる
『やったぞ、さむつむ。番頭さんからお許しが出たぞ』
「嘘やろ北さん」「嘘やと言って!」
「何も聞こえへん。じゃ、頼んましたAさん」
『了解です』
「見捨てんといてやー!」
つむの声が響いた
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作者名:日紫喜 | 作成日時:2018年8月30日 14時