友人 ページ10
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「…なぜ、Aは俺たちと入らないんだ？」
ちょいちょいと袖を引かれて振り返れば、混乱したように俺に尋ねてくる小芭内。
「いくら私だって
嫁入り前に男子とお風呂なんて入らないよ」
流石にそこは別にしないと〜なんて言って、ヘラヘラ笑うAを、あまりにも恥じらいのない言動をするので、俺は首元を掴み捕獲する。
「っおま、女だったのか！」
「え、小芭内ったらなんの冗談？」
随分砕けた口調で話すようになった小芭内は、そう面白そうに笑うAに、やはりなと安堵した表情を見せる。
しかし、そんな小芭内に追い打ちをかけるように、私は女だよと笑い飛ばした。
「…俺は騙されんぞ
その着物、どう見たって男物ではないか」
「うん、これ杏寿郎の」
小芭内の気持ちも分からんでもない。
Aは端正な顔立ちをしているし、今は男物の着物を着ているから、初対面なら誰だってそう思うだろう。
「……その髪だって、女にしては短すぎる」
「ははっ、髪なんて個人の自由じゃない！」
小芭内だって男の子なのに長いでしょと言い返せば、ぐぬと小芭内は押し黙る。
「Aはこういう奴なんだ」
「ちょっと杏寿郎、それどういう意味」
◇
その数日後、髪が短くて、纏まりが悪くなったとAがボヤくのを聞いて、俺たちは贈り物をしてやろうと、2人で櫛屋さんに行った。
「すみません！俺たちと同い年くらいの子に贈る櫛が欲しいのですが！」
そうこの店の主人に話しかけると、おやおやと物珍しそうに、店主は隣にいた女性と俺たちのところまで来てくれる。
「2人で女の子に送るのかい？？」
「はい！」
あまり友人間で櫛を贈るのは良くないと、親切に説明してくれるその女性に、俺はAが髪を切ってしまったことを話す。
「まぁ！随分思い切りのいい女の子ね〜」
…いや、ただ馬鹿なだけだと思うがと、俺と全く同じことを思っていたのか、陰に隠れていた小芭内がそう呟く。
「ふふっ飛びっきり素敵なのを選びましょうね」
そう言って2人はニッコリ微笑むと、木製の丸くて可愛らしい物をいくつか持ってきてくれた。
◇
そして、いつも通り学校から帰ってきたAに、2人でソレを渡せば、Aは花が咲くような笑顔を浮かべる。
それを大事そうに抱き締めるAを見て、俺はまた胸が高鳴った。
◇◇
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年10月31日 13時
