逢瀬 ページ22
◇
「っよもや!君の唇はとても柔らかいな!」
気が動転して、思ったことをそのまま口に出してしまうと、Aは顔を真っ赤にして俺の口を手で塞ぐ。
「…と、とにかく!
その方とのご関係が友人であるなら、
ハンカチなどといった日用品の方が良いと思います」
「ほう」
昔買った櫛のように、こういったものにも贈り物にすると意味が着くのかと、感心してAを眺めていると、まだ赤い顔を冷ますように、パタパタと手で顔を仰いでいる。
「ハンカチにはどういった意味があるんだ?」
「…そうですね。
外国では別れを断つという意味もあるそうですが、
価格も手頃ですし、贈り物にする方は多いですよ」
持ち前の知識量で色々なことを話すAに、俺はさすがだなと思いつつ、どうせなら似合うものを買ってやりたいと、俺はその真っ赤な棒口紅を選ぶ。
「喜んでくれるだろうか!」
「…はい、きっと」
俺が口紅を手に取った瞬間、とても泣きそうな顔をしたA、すぐにいつも通りの顔でにっこり笑う。
その後、Aを家に送るまでの道中。
Aの口数は一気に減り、俺を昔の呼び名で間違えることはなくなった。
◇◇
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時