出逢い ページ3
◇◇
俺の家の近所には、大きな桜の木があった。
「よいしょっ!」
「っうわ!」
角度的に俺から見えなかったためか、いきなり桜の木から飛び降りてきた女の子に、俺は大きな声を出してしまう。
「…?」
そんな俺を怪訝そうに見る彼女は、人形のように顔が整っており、顔を歪める姿も様になっている程だった。
「Aさん!」
そう遠くから男の人の声が聞こえると、ビクッと肩を揺らし、突然俺の手を引いて走り出す。
「え、なっ!?」
「ねぇ!君の家ここら辺?」
混乱して声を上げた後、そんな彼女の質問に勢いで頷いてしまうと、家はどこだと走りながら聞かれる。
「あそこの」
そこまで言いかけたところで、俺は口で説明するより連れて行ってしまった方が速いと、掴まれていた方の手を離し、彼女の腕を力一杯引いてあげた。
・
「っはぁ、はぁ…」
そう目の前で息を切らす彼女は、俺の事をキツく睨みながら呼吸を整えている。
「悪い、速すぎたな」
緩めたつもりだったんだが…と申し訳なく思って言うと、それが嫌味に聞こえてしまったのか、彼女は更に目をつりあげる。
そして、やっと呼吸が整ったかと思えば、突然門の方を指指して、彼女はお邪魔するねと歩き始める。
そんな自由すぎる彼女を追いかけるように、俺も門をくぐった。
◇
「ありがとう杏寿郎。助かったよ」
家に招き入れた後、お互いに自己紹介を始めると、年の差が一つしかないことが分かる。
「Aは、一体誰から逃げていたんだ?」
探している様子の声が聞いたからと、気になっていたことを質問すれば、Aは当たり前のようにお見合い相手と答える。
「お見合い…?その歳でか」
「うちの家は昔からそうだよ」
俺が正座する正面で、机に頬杖を着くAは、つまらなそうに目を伏せて話す。
「だってその御相手、十以上も年の差があるのよ」
私が20歳になった頃には、もうおじさんじゃない!
そう文句を言うAは、行動の節々から垣間見える育ちの良さから、お嬢様というやつなのであろうが、お見合いから逃げてきた話といい、この態度といい、所詮ジャジャ馬娘というやつなのであろう。
そんなことをぼんやり考えていると、部屋の外から母上の声が聞こえた。
・
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時