熱 ページ11
◇◇
「今日も一日安静に」
「っはい!」
生まれて初めて熱というものを出してしまった俺は、頭に響く鈍痛により、昨晩から今日の昼にかけて、一日中寝ていた。
俺の様子を見に来た母上は、そう元気に返事する俺を少し見つめて、服用する分の薬だけを置いて部屋を出ていってしまう。
そして、その薬を飲むか否か、葛藤すること数十分。
決まった時刻に荒々しく玄関の戸が開けられた音がすると、真っ先に俺の部屋に足音が向かってくるのが聞こえた。
「あれっ杏寿郎は?」
「…部屋で寝ている」
絶対に俺の部屋には入らないようにと、母上の言いつけをしっかり守っている小芭内は、ずっと俺の部屋の前にいたのか、すぐ近くで2人の声が聞こえる。
「全く。薄着で稽古なんてしてたからだよ」
「お前は半袖だっただろう」
そんな小芭内達の会話に、馬鹿は風邪をひかないと言う言い伝えは本当らしいと一人で笑ってしまう。
「今日は小芭内と2人か。
じゃあ久しぶりに小芭内と相撲をしてやろう」
「一人でしていろ、馬鹿め」
俺がいつお前と相撲などとったと、小芭内の呆れる声といつも通り騒がしいA。
そんな賑やかな声が聞こえてきてしまうと、隔離された部屋で寝ている俺は寂しくなってしまったため、こっそり2人の様子を見ようと襖を開ける。
「…」
隙間から覗くように襖に顔をつければ、外の景色が広がるかと思えたそこには、掌1枚もない距離にAの顔があった。
「「ぅわぁ!!」」
俺と同じく驚いたように声を上げるAの重心が、驚きで後ろに下がっていくのを感じる。
そんなAを見て、俺は反射的に襖を開けて腕を掴んでやれば、Aは大きな目を更に見開いて、驚いたように俺を見た。
「A…!」
大丈夫かと声をかけた後、Aも俺を心配して部屋を覗こうとしていたのかと思うと、心がぽかぽかと暖かくなる。
そして驚かせて悪かったなと腕を話してやれば、Aはポカンとした表情で、俺に掴まれた方の腕を抑えた。
「どうかしたか?」
「いや杏寿郎が熱出てるって話、嘘?」
「…?」
いきなりおかしなことを言うAは、俺に何故か仮病疑惑をかけてくる。
質問の意図が分からず首を傾げていれば、Aは俺の反射速度と腕を握る力の強さに驚いたと、目をぱちくりさせながら話した。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時