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《Aちゃん頑張れ！》
《Aちゃん早いよね〜！》
私の番が来て、立ち位置に立つと
走り終わった子たちが応援してくれたり、
話しているのが聞こえてきた。
最悪なことに、頭痛は良くなることもなく
むしろさっきよりも酷くなっていて、
正直いつもの速さで走れるか分からなかった。
でも、練習だから手抜いてるとかは思われたくなくて。
《やっぱ平塚はえーな！》
《さすがAちゃん！》
走ってる人にも聞こえるって
どんなボリュームで話してんのって感じだけど、
今は正直それどころじゃない。
走ると振動が頭に伝わって、尚更痛みが増す。
なんで練習のタイミングで痛くなるかなぁ。
どうせなら家帰ってからでいいじゃん...。
「Aちゃん、やっぱり早いね！」
走り終えると、佳奈ちゃんが近寄ってきて
声を掛けてきたけど痛みが酷くて反応できない。
後頭部をガンガン、トンカチで殴られてる感じがする。
「え、Aちゃん！？」
もう立ってるのもしんどくて、その場にしゃがむと
佳奈ちゃんは"どうしよう..."とあたふたしていて。
愛未はもう別の種目の練習に行ってるし、
涼花ちゃんも複数の種目に出るから既にここには
もういなかった。
《どうしたの？》
「あ、Aちゃんが...」
《頭痛いの？》
そもそもクラスのみんなから少し離れたところで
しゃがみこんだから、周りが気付くのも難しくて。
ただただ、痛みに耐えようとしてたら
二人の女の子が駆け寄ってきてくれた。
《ちょっと待っててね》
《あっ、元木くん...》
私が小さく頷いたのが分かったみたいで
誰かを呼びに行ってくれようとした時、
もう一人の女の子の小さな声が聞こえた。
「ごめん、後は大丈夫だから。ありがとな気付いてくれて」
《あ、うん...》
きっとその子たちが気まずそうな声なのは
湧ちゃんと佳奈ちゃんが付き合ってるからで。
...あ、そっか。
佳奈ちゃんって独占欲強いって思われてるんだっけ。
「佳奈も、ありがとな」
「...ううん、私何も出来なかったし」
...あれ、でも独占欲強いんだったら
私と湧ちゃんがギクシャクしてたら喜ぶはず。
だって尚更自分だけの湧ちゃんになるじゃん。
...それとも私とは友達になりたいから対象外とか？
ていうか、本当に佳奈ちゃんって独占欲強いの？
ずっと一緒にいるのは湧ちゃんがいなくなったら
佳奈ちゃんが一人になるから？
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作者名：Tsumu. | 作成日時：2021年1月16日 21時
