君の隣。 (ページ17)

今日:27 hit、昨日:39 hit、合計:159,366 hit

next to you 17 ページ17

.

「A」

湧ちゃんが部屋から出てって少し経った頃、

窓から顔を覗かせたのは颯ちゃんで。

「...湧もバカだよねぇ。結局俺に任せるなら喧嘩しなきゃいいのに」

「...」

「ねぇ、おれ今からAを傷つけること言っていい？」

颯ちゃんはそう言うと、隣に座ってきて

私の手を優しく握ってきた。

「...湧が葉月先輩のことばっかり言うのは仕方ないんだよ」

「彼女だから？」

「うん、そう。恋は盲目って言うでしょ？いまの湧には葉月先輩しか見えてないの」

「...」

「でも湧はAのことも大事なの」

「幼馴染みだから？」

「んー...湧にとってAは"ただの幼馴染み"ではないんじゃない？...Aのことも葉月先輩のことも、湧にとっては"大事な存在"なんだと思うよ」

「...そんなの都合良すぎるよ。自分の大事な人同士仲良くなってほしいなんて、そんなの湧ちゃんのワガママじゃん」

ずっと俯いていた顔を上げて、颯ちゃんの顔を

見れば颯ちゃんは今まで見たことがないくらい

優しい顔をしていて。

「そうだね、湧のワガママだよ」

「...佳奈ちゃんは、友達がほしいから、湧から私の話されたら友達になりたいって思うよね？」

「うん」

「...私の気持ちは？...私は、湧ちゃんのことが好きで...っ...なのに、なんで...っ...」

なんで、私は好きな人の彼女と

友達にならないといけないの？

そんなのおかしいじゃん...。

「ね、A」

「...なに」

「湧に対しての気持ちを一回リセットして、おれとつきあって、一回葉月先輩と友達になってみない？」

「......なにいってんの、颯ちゃん」

「おれのこと、傷つけていいから。
...このままじゃAが壊れちゃうよ」

颯ちゃんは、私の涙を指で掬うと

優しく私の頭を撫でた。

.