81 ページ37
北「目赤くなってしもたな」
北は指で優しく一ノ瀬の目の下を撫でるように触る。
『んッ』
北「顔洗ってくるか？」
『せやな...泣いたのバレんの嫌やからな』
北「別にええやん」
『アカン！』
北「なんで？」
『後輩の前ではかっこええ俺でいたいやん』
北「自分で言うんや」
『ええやん！俺かっこええやん！』
北「ふふッ。せやな。優がいっちゃんかっこええ」
『やろ？』
一ノ瀬は二ィっと笑い北を見る。
北はそんな彼の頭に手を置き、慣れた手つきで撫でる。
北「顔洗ったら戻ってくるんやで」
『うん。すぐ行く』
一ノ瀬はくるりと向きを変え手洗い場の方へ歩いていく。
北「....見えてんで」
北がそう言うと廊下の端から、侑・治・角名・銀島が出てくる。
北「後輩の前でがかっこええ自分でおりたいんやって」
4人「.....」
北「...行ったり」
侑「え、でも」
治「かっこええ自分でおりたいって...」
北「あいつはどんな時でもかっこええから大丈夫やろ」
北は口元を緩め、4人の横を通り過ぎていく。
4人は目を合わせて一ノ瀬が向かった手洗い場へ走っていく。
『よしッ。すっきりした』
きゅっと水道の水を止め、扉の方へ歩こうとすると―
4人「「優くん！！」」
『うぉぉ...びびった。なんや』
侑「えっと...その...」
『あ？何モジモジしてんねん』
治「あ...足大丈夫？」
『まぁ、痛いけど歩けるから大丈夫やろ』
治「そっか」
『...で？何や言いたいことあって来たんやろ？』
角「....」
だんまりな4人を見て一ノ瀬ははぁっと息を吐く。
『お前らこっち来ぃ』
4人は申し訳なさそうな顔をして一ノ瀬に近付く。
『ありがとうな。楽しかった』
一ノ瀬は4人の頭をわしゃわしゃ撫でながら言う。
『来年頑張れや』
その言葉を聞いた瞬間4人は一ノ瀬に抱きつく。
『ははッ。苦しッ』
侑「ごめ...優くん、ごめん...」
角「優くんと勝ちたかったよ」
銀「優くん！ほんま...俺...もっと！！」
一ノ瀬は笑いながらポンポンと背中を叩く。
治「優くん」
『んー？』
治「優くん」
『うん』
治は目を真っ赤にしポロポロと涙をこぼす。
その姿を見て一ノ瀬はぐっとこらえる表情をする。
『お前らと一緒にバレーが出来て...いや...お前らが後輩でほんま良かった』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1092人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みる | 作成日時：2022年12月5日 21時
