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『失礼しました』
一ノ瀬はペコっと頭を下げて面談室から出ていく。
『イタリアか...夢あんなぁ...』
治「え？」
一ノ瀬はばっと顔を上げて後ろを振り向く。
そこには一ノ瀬と同じように驚いた表情をした治が立っていた。
治「優くん。イタリアって何？」
『あー...まだ決まったわけちゃう』
治「優くん海外行くん？」
『....』
治「日本の大学ちゃうの？会えへんくなるの？ねぇ、優くん！」
『はぁー...1番最初は信介って思うてたけど...まぁ、ええわ』
治は一ノ瀬の両肩を掴み不安そうな顔で見つめている。
『いくで。海外』
治「....」
『まぁ、大学はこっちなんやけどね。短期契約みたいな』
治「短期契約...？」
『そっ。まぁ、でもまだ(仮)やし』
治「なんで(仮)なん？」
『春高で結果出さなアカンやろ』
一ノ瀬はぐーっと背筋を伸ばす。
『春高優勝して、大学行って海外でもプレーして、いつかは世界に通用する男になる』
治「うん」
『それが俺の人生プラン。どやすごいやろ』
治「すごいなぁ。ほんまに」
『そんでお前らとずーっと仲よお過ごす』
一ノ瀬は改めて治を見つめ近くまで歩み寄る。
『だからそんな顔すんな。男前が台無しやで』
治「優くんがイタリアとか言い出すからや...あほぉ。バカぁ」
『はっははー！早とちりしたお前が悪いだけや』
治はケラケラ笑う彼をじっと見る。
治「唐揚げとポテト」
『はぁ？』
治「それくれたら許す」
『はぁー！？なんでやねん！許すって別に俺悪いことしてへんし！』
治「....」
『だー！！わかった！買うたるから機嫌直せ』
治「よしッ」
『確信犯やん...だるいってぇー...』
一ノ瀬は財布の中身を確認しながら歩き始める。
治「優くん」
『あ？』
治「優くん」
『だからなんやねん』
治「好きやで」
『.....は？』
治「人として」
『あぁ...おぉ、おう。俺も好きやで。人として』
一ノ瀬の耳は真っ赤になっている。
その姿を見て治は満足そうに笑い彼の横に並ぶ。
『(ビビった....)』
治「(今はまだこのポジションでええか)」
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作者名：みる | 作成日時：2022年12月5日 21時
