✧︎ ページ33
私は何も言わずに、晶哉の背中をゆっくり撫でる。
小さい背中。
まだ子どもの体。
撫でるたびに、晶哉の体の力が少しずつ抜けていくのが分かる。
「……眠なってきた?」
そう聞くと、胸元で小さく頷く気配がした。
「ん……ちょっと」
声ももう、だいぶとろとろや。
「ほな、寝よか」
「……うん」
しばらく静かな時間が流れる。
時計の針の音。
外の遠くの車の音。
晶哉の呼吸。
全部がゆっくり重なって、部屋が静かに満ちていく。
私の服を掴んどった晶哉の手も、少しずつ力が抜けていく。
それでも、離れはせえへん。
「……おかあさん」
ふいに、小さな声がした。
最初、誰に言ったのか分からんかった。
でも晶哉は目を閉じたまま、少しだけ私にくっつく。
「……おかあさん」
もう一度、同じ言葉。
寝ぼけていると分かっとっても、胸の奥が少しだけ重くなる。
その瞬間、やっと気づいた。
——当たり前や。
普通に考えて、小学一年生の小さい子が母親を亡くして平気なわけがない。
今日一日、笑っとったし、元気そうやったし、いっぱい話してくれたけど。
それでも、寂しくないはずなんてない。
夜になったら、思い出すこともあるはずや。
私はそっと晶哉の頭に手を置く。
柔らかい髪を、ゆっくり撫でた。
「……うん」
小さく息を吐いてから、静かに言う。
少しでも晶哉を安心させたかった。
「お母さんはここに居るよ」
そう言って、腕に少しだけ力を込め晶哉をぎゅっと抱きしめ返す。
晶哉はもう半分眠っとるみたいで、小さく「ん…」とだけ返した。
そのまま胸元に顔を埋めてくる。
安心したみたいに、体の力が完全に抜けた。
しばらくすると、静かな寝息が聞こえ始める。
すぅ、すぅ、と小さな呼吸。
私はそのまま天井を見上げた。
さっきまで他人やったはずの子が、今はこんなに近くで眠っとる。
私は晶哉の背中を、もう一度ゆっくり撫でる。
「……おやすみ」
小さく呟くけど晶哉はもう返事もせえへん。
ただ、安心した寝息だけが静かに続いとった。
その温もりを腕に感じながら、私もゆっくり目を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 486人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵碧(プロフ) - 初コメント失礼します!4兄弟がすごく可愛くて夢主もクールだけどすごいいい人で最高です!この後どうなるんだろう...幸せになって欲しい!ってハラハラドキドキしながら読ませて頂いてます! (5月18日 14時) (
レス) id: f92ab290e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はいせ | 作成日時:2026年2月27日 7時


お気に入り作者に追加


