ひと皿の記憶4 ページ13
「本当は気づいてるんだろう?
勲章を獲った今
次に何処へ向かえばいいか分からなくなっている事
頂に立ち尽くしたままで1歩も前進できていない事に料理人にとって停滞とは退化と同様
この勝負で看板料理(スペシャリテ)を出さなかったのは自分の料理が止まっている事を俺達に知られたくなかったからだろう」
「黙れっ!!」
大声を上げる小次郎
「あんたに何が分かるっ!!
遠月グループの雇われシェフやってるあんたなんかにこの俺の何がっ…!」
スッとテリーヌを小次郎の前に出した堂島
「食ってみろ
田所くんの料理ｰｰｰｰ」
「フン…
何でそんな事…」
黙ってしまった2人
そして
カチャ カチャ モグ…
テリーヌを食べた小次郎
「ハ…
火入れが甘ぇ
盛り付けもパテものつなぎもなってねぇ
堂島さんもヤキが回ったな…」
でも
カチャ モグ…
小次郎はもう一度食べた
「(………ッ
なのに
なのに何故
こんなにも心に染みるのか
拙さはある
だが工夫のひとつひとつに『食べる側』への気配りが込められている
張り詰めた心を解いていくような……
この味は…
まるでｰｰｰｰ)」
「小次郎ー!
こんな所におったんね!
あんたまたケンカしたと!?
どーせつまらん意地張ったとやろ!」
のどかな田舎にある親子が言い合っていた
「フン…!
しゃあしか!!
俺は独りでよか…!
誰にも分かってもらえんでよかったい!!!」
その子供は肌着に短パンという格好で所々汚れていた
母親らしき人は小次郎という少年の手を握り目線を合わせるためしゃがんだ
「アンタはいつもそげんしてつっぱっとるけ
誤解されやすいばってん…
ホントは優しい子やってる分かっとるけんね」
「お…
おかーちゃん…」
小次郎から涙か出た
「さもうすぐ暗くなるばい…
今夜はアンタの好物ば作ったけん
はよぉ帰って食べようね
ほら小次郎見てみぃ!
虹の出とらずばい」
まるで…
「綺麗かねぇ
小次郎」
かぁちゃんと
むすんだ
手と手にれいんぼー
こじろう
母の愛!!!
親子は手を繋ぎ帰っていった
コロポックルと雪ん子､座敷わらしの恵が親子を見守っていた
カチャン…
小次郎は涙を流し手からコインが落ちた
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作者名：レンサ | 作成日時：2019年2月13日 0時
