ひと皿の記憶3 ページ12
〜四宮小次郎 side〜
その年最も仏料理の発展に貢献したシェフへ与えられる…
それが『プルスポール勲章』
もし獲れれば日本人初の快挙…!!
「本場で磨かれなきゃ俺の料理は完成しねぇ
やってやる…!」
日本人がフランスで店を開くｰｰｰｰ
それは想像を絶する苦難の道だ
俺は在学中に各種料理コンテストでかき集めた賞金を手に渡仏…
6年間の修業を経え有名店がしのぎを削る美食の一等地パリ8区に「SHINO'S」をオープンさせた
「驚いたよ…
その若さでオーナー・シェフとは
まったく見事な料理だった」
「ありがとうございます…!」
客に褒められて嬉しかった
でも店を開けた事で舞い上がっていたのかもしれない
初めは小さな歪みだった
「おいっ…!
誰だ!!
ソースのルセットを変えたのは!?」
ルセットが変わっているのに気付き厨房に行った
「…パリではこちらの方が好まれますよ」
「ムッシュ四宮の味作りはいささかオリエンタルに過ぎると思いますね
ま…
日本人(ジャポネ)には分からないか」
「ハハ…
聞こえるぞ」
その後様々なグルメ雑誌での評価は最悪だった
東洋人(よそもの)への差別意識
若すぎる俺(シェフ)への反発
それは次々と大きな裂け目を作り出し
「これ以上入金が遅れるようならもう取引は出来ないよ!」
俺は頭を抱えしゃがみ込んだ
店の経営は傾いていった…
「愚図は俺の厨房に必要ねぇ
消えろ」
信じられるのは自分だけ
スタッフすら敵と考えろ
「ダメだ
俺のルセットは崩させない
ルセット通り最後にミロワールして仕上げろ」
「お…
お言葉ですがシェフ!
この手順でも充分高品質に仕上がります
それに原価率と作業効率はこちらの方が…」
「料理長(シェフ)は俺だ
不満なら出ていけ」
「ウ…
ウィ…シェフ!」
張り詰めて
張り詰めて
張り詰め通して
俺はいつの間にか「レギュムの魔術師」と異名が付けられた
俺はそこまで辿り着いた
そしてついにプルスポール勲章を手に入れた
〜四宮小次郎 side end〜
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作者名：レンサ | 作成日時：2019年2月13日 0時
