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「あの、それで……彼はいつ戦線に戻れますか」

『論文は会心の出来だったんだが。うーん、これ以上増やせると言ったら功績しかないんだが……』

先日の統一テストが不合格だったヴァイスは、こう呟いていた。そんな彼は、少しでも早く傷を治して、功績を積むことに集中したいはずである。
傷を負った彼は酷い有様であったが──何せ医療分野の才人だ。元に戻せるに違いない。政士は、そう信じて疑っていなかった。
「無理だね」
冷たく言ったのは、その才人だった。
「──は?」
「だから無理だと。もう右足が使いものになりそうじゃなかったからね、切除しておいたよ。まあ、義足なりなんなりを使えば日常生活には苦労するまい」
こともなげに才人は言う。
「ちょっと待ってください。じゃあ、ヴァイスが次に戦いに出ることは──」
「無理だろう。あれじゃ、戦場で立ち回ることは不可能だ」
「あいつは、あいつの夢はどうなるんですか!」
珍しく声を荒らげた政士に、予備隊員は驚いたように身を竦めた。
しかし、才人の方は歩みを止めることなく。振り返ることなく続ける。
「夢? 才人になること、か? ──まあ、いいタイミング、という所じゃないか。もう十何回とテストを受けてなれないんだったら、これ以降も無理だろう」
お前、と思わず政士は才人へ飛びかかりそうになった。しかし、その身体は別の予備隊員に無言で押さえつけられ、届くことは無い。
そこでようやく、才人は振り返った。
「意外だな」
「……何がだ」
両の手を捉えられている政士は、ぎろりと視線を光らせる。
「君たち予備隊員は、てっきり『ライバルが減った』と喜ぶものだと思っていた」
皮肉などでない、純な瞳で才人は言った。

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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか?? そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……(控えろ) (2020年1月1日 0時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです! (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます! 昇華隊の野郎共はいいですよね!!(負けじと大声) (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です! (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年5月14日 23時

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