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第1章予告・プロローグ ページ11

「そろそろ、潮時かもしれないな」

第148裏図書館館長、高原啓介はこう言った。
彼がここを訪れたのは30年前。実家の家業である牧畜業が感染症の流行で打撃を受け、末っ子だった彼はある種「口減らし」の一環として祖父に預けられた。
──その祖父の家こそが、ここ裏図書館だったのだ。それから彼は本を友とし、教師とし、文字通り「本の虫」として育つ。一度教育場に行き、卒業後の薬の服用により一度その記憶は消えかけたものの、祖父を尋ねるついでに本を読めばたちまちその記憶は戻った。
その後彼は裏図書館の近くの村で酒場を営み始める。夜は働き、朝と昼は本を読み耽る。そんな生活を過ごしていた。
彼が二十歳の時。もう枯れ枝のような手足しか持たず、起き上がるのもやっと、となった祖父は言った。
「なぁ、もし、よかったら──この図書館、継いでくれんか」
もちろん、と彼は頷く。その数日後、祖父はこの世を去った。
しかし、それから15年。彼には、もう既に本や図書館より大事なものが出来てしまった。妻に子供に愛犬──家族、というものである。
それに、現在はなかなか裏図書館の訪問者もおらず、どちらかと言えば政府からの密偵の方が多いくらいだ。おそらく政府側にはもうこの図書館の存在は知られており、間もなく「焼かれる」のであろう。
──もう、彼には若い頃のような、本や図書館を守る程の気概も、それらを枕に死ぬという勇気もない。
故に、彼はこれを持って裏図書館、そして協会からも手を引くと決めたそうだ。家族を守るために。
──けれど、せめて幾つかの本は生き残ることが出来ますよう。
そう思い、言ノ葉連合を頼るのが、彼ができるかつての友と教師への祝福だった。

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紫清(プロフ) - ましろさん» 確認しました、素敵なキャラありがとうございます。 (2019年6月26日 10時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - https://uranai.nosv.org/u.php/hp/Bracket/ 完成しました!確認よろしくお願いします! (2019年6月26日 7時) (レス) id: 542e908dcf (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ましろさん» 了解しました、テンプレお願いします! (2019年6月24日 17時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 言ノ葉連合/メンバー/女/音を物質に変える/オッドアイで参加希望です。 (2019年6月24日 17時) (レス) id: 542e908dcf (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» 確認しました! 素敵な作品ありがとうございます。リンク貼らせていただきます。 (2019年6月21日 10時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年5月2日 22時

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