【東京-言辞戰線】いのち短し、紡げよ言の葉【派生作品】 (ページ6)

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それから針が外された後、怖い赤髪の人に連れられた、戦闘班の副班長を名乗る人から別に説明を受けた。何てことはない、業務内容と提出書類についての説明。――副班長さんがおどおどとしていて頼りなさそうに感じたのは、秘密。
　がらんどうになった、今月末には出ていかないといけない家で、さて、と書類と向き合う。氏名の欄は「錦川遼太郎」と不承不承に埋めた。通称の欄の上で、百均のペンは止まる。
『それ以上に、君は君、だよ』
　茜紡さんの言葉を思い出す。
　錦川遼太郎は私じゃない。数週間前に死んだ男の名だ。――どうせ、私にはもう家督を継ぐ義務も何も無い。悲しいくらいにまっさらな私なのだ。だったら、ねえ。
　翌日私は図書館に行って、たくさんの本を読んだ。女の人の話。お姫様、魔女、巫女、医者、文学者、そして、そしてそしてそして。
　強くて弱くて柔らかい。可愛くてかっこいい。冷たくて、凛としていて暖かい。聞き分けがよくて、わがまま。いろんな、いろんな女の人。
　私、女がいい。改めてそう思った。
　そして私はその晩、また私は書類と向き合った。私はどんな女になりたい？恋に身を捧げたジュリエット？お姫様になったシンデレラ？男のように戦った鶴姫？聖女となったジャンヌ・ダルク？
『遼ちゃん』
『ぜーんぶアンタが頑張った証拠だろ』
　――思い出した言葉と彼女の名前。恋に身を焦がし、恋を詠い、苛烈に平和を詠った女性。響きが似る、と私はその名を書いた。

　

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