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横目で見てみると、まだ点滴は四分の一ほど残っている。カーテンに囲まれた四方では見るものがないし、眠ろうにも先程の発見が嬉しくて、わくわくして眠気は飛んでいく一方だった。
とりあえず点滴の雫を眺めていると、またカーテンの開く気配がした。
「失礼、入るね。調子はどう？ 顔色は大分よくなったね！」
そうして入ってきたのは、黄色い目の男の人。――確か、気絶する前に最後に会った人。それで、確か――茜紡さん、支部長って言ってたような。
「ごごごご迷惑をかけてしまいごめんなさい！ えっと、こんな体調管理も出来ない人間は、駄目、ですよね……」
思考が繋がった瞬間、慌てて起きて頭を下げる。すると、下げた頭に手のひらの感触がした。角度が足りなかったか？ このまま押し下げられるか、そのまま圧迫されるか――耐えろ耐えろ耐えろ、初めてじゃないだろう。ぎゅっと目を瞑って、次を待つ。
と、その手が、髪の毛をかき分けるように前後ろに動いた。
知らない感触に驚いて、思わず顔を上げて、支部長さんの顔をまじまじと見てしまう。支部長さんも支部長さんで目を見開いて、気まずそうに手を離した。
「あ、悪ぃごめん。嫌だった？」
嫌だったか、と自分に問い直す。嫌か、と聞かれれば。
「いいえ。初めてだったので、びっくりして」
「お、そうかそうか。じゃ、遠慮なく。駄目なんかじゃねえよ。いや、休まないってのは駄目だけど。お前さん、頑張りすぎたなぁ。さては。よーしよしよし、よくここまで頑張ったな」
そう言って、わしゃわしゃと支部長さんは私の頭を擦る。正確には擦る、じゃないんだろうけど、それに合う語彙を私はもっていなかった。
嬉しい、けれど。
「私、褒められることなんて何も」
「ええ、頑張ったんだろう？」
「頑張って、ないです。なんの結果も私は残せてません」
ぴたりと手が止まった。一瞬不安になった直後、支部長さんの喉の奥からくつくつと音がした。間もなく、堪えきれなくなったように吹き出す。
「はっはっは、お前さん何を言ってるんだ。その豆とペンだこのある手も、きちんとした礼儀も、ぜーんぶアンタが頑張った証拠だろ。もーっと胸張ったってバチは当たらねえぞ、ということでオレが褒めてやる。頑張ったなぁ、よく頑張った」
ぐしゃぐしゃと勢いよく手が動く。そのせいで髪はボサボサになって、視界にまで髪の毛が入ってくる始末だ。
でも、当然悪い気はしなかった。
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