彼は全盲のバンドマン【JW】《緑》 (ページ8)

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智洋side

Aちゃんが俺の家に引っ越してきた。

新しい家借りようかって話もしたけど、
Aちゃんが俺の家がいいって。

俺も正直そっちの方がありがたかった。

やっぱり慣れた家の方が絶対動きやすいし、
近くのスーパーとかコンビニとか駅の行き方も
変わらん方が嬉しい。

Aちゃんもそのことを
わかってくれて言ってくれたのか
ほんまに俺の家が良かったんかは分からへん。

Aちゃんと新居に住むのは、
夫婦になった時。

俺はこの時そう決めた。

まだ結婚の話なんて
2人で1ミリもしてへんけどな。

勝手にそう思っとる。

智洋｢ねぇ、Aちゃーん？
どっちがカレー？？｣

A｢ん？？右！｣

智洋｢こっち？？｣

A｢あっ、違う。
ともの左手の方！右手はシチュー！｣

智洋｢こっちね！｣

A｢うん！｣

智洋｢ありがとー｣

料理は得意な方やったし、続けてるんやけど、
同じ箱の形のカレーとかシチューとか
俺には分からへん。

読み上げてくれるアプリもあんねんけど、
めんどくさいからAちゃんに聞いてまう。

いつもすぐに答えてくれるAちゃん。

ずっと、なるべく人には頼りたくない、
とか思っとったけど、
そんな俺を変えてくれたのも
間違いなくAちゃん。