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て「恋バナってか……なんか、告白もどき？みたいな」
『えっ？』
揶揄うような目線に、本気で訳が分からなくて眉をひそめる。
『なに？どういうこと？』
て「いや、だからさぁ。「好きかも〜」「告白したことなくて〜」「からかわないでよ〜」って言っとったやん」
てつやの言葉を元に、私は数分前の会話を遡る。
うん。たしかに言った。
ただ、「好きかも」の相手はてつやで、揶揄われたのはこの歳にもなって告白もしたことがない優柔不断さであって。
『勘違いだよ。私とキヨくんはただの友達』
て「そーなの？好きとかないの？」
『なんでそうなるの』
寧ろ私は貴方の優しさに絆されているというのに。
デリカシー皆無男は、何も気にせず唇を尖らせる。
て「ベッタベタの甘い声で喋ってたから」
『はい？』
て「昔かむがとしみつのこと話す時と、全く同じ声しとったから、さ。邪魔すんのも野暮かと思って聞かんようにしてたんだけど、AirPods落とした時に家ってワード聞こえて飛び込んじゃった」
甘い声。そんなの、意識したこともなかった。
『私、分かりやすい？』
て「いや、今更？(笑) だって素直バカだよ？」
それなら。それなら、私の今のこの微妙な気持ちも読み取ってよ。
今まではずっと、元カレに未練タラタラでいると、自然と新しい人が私に告白してくれて、そこから私の恋は始まっていた。
それが今回は、としみつを想い続けていたはずが、いつの間にかてつやに気を奪われたのだ。
いや、いつの間にかなんかじゃない。
確実にあのスノボの日、私はてつやの優しさに打ちのめされた。
人生で初めて、自分から人を好きになった……のかもしれないのだ。
『じゃあ今の気持ち、分かる？』
て「面倒臭い彼女みたいなこと言うやん」
チラリ、てつやは私の顔を見て、複雑な顔をした。
て「今からキヨくんの恋バナは止めてよ？俺、明日の編集しないとダメだし」
『あ、惜しい。相手が違う』
て「はい？」
『てつや。私、てつやのこと、好きになったかもしれん』
て「…………は？」
大きく見開かれた茶色の瞳は、ずっと綺麗だ。
てつやの純朴さが全てここに詰まっている。私の大好きな目。
……あ、嘘ついちゃったかも。
『ごめん、間違えた』
て「……いや、だよね？さすがにね？」
ホッとした表情を浮かべた腕を握って、私は大きく口を開けた。
『私、てつやのこと、好きです』
チャリン。彼の手汗で小さな鍵が滑り落ちた。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2022年6月17日 1時
