現人神が現れる日 ページ47
現人神。
それは万物を統べ、平伏させ、世界そのものを手中へと収めた世界の神から賜る称号。
神の御声を聴き、世界の全てを観て、世を眺める神の代弁者。
女神とはまた違うそのワンランク上に位置する上位種族。
もはや人と同類にすることも能わず、その姿を直視することもまかり通らない。
しかしこの国は女神が祖国と定めた他国とは決定的に違う神に認められた国。
現人神も何度もその命、その外見を変えているが生きてきた数千年の記憶を常に継承していると言う。
一連の過程の中で人に寛容になった現人神は御姿を現世の人々に晒すことを良しとした。
その御姿を一目、たった一目でもと帰還した第一王子の、否、現人神の凱旋に民衆が集まるのはもはや道理なのだ。
「ギルバート・コーネリアス・アーサー・クロウリー殿下。本日から近衛として御身にお仕えいたします。アルマ・フォン・ヴィクトリアで御座います。何なりとお申し付けくださいませ。」
「良い。良きに計らえ。」
機械技術が発展した隣国もあるが神国と謳われるこの国では古き伝統を重んじる。
たとえ発展したとしても伝統を押し潰さない程度に共存を図っている。
馬車の外側を馬に乗って並走する騎士とやらに適当なことを言って己しかいない馬車で寝転ぶ。
カーテンを閉め切り、歓声を上げる民衆の声にため息をつく。
顔を隠す黒いヴェールは内側からは視界を阻害しない特注品。
いつぞやか面白いからと顔を出し始めれば面倒ごとばかりになって結局隠すことにしたのは記憶に新しい。
久々に"現世"に出てきてみたはいいがやはり大したことはない。
このアルマとやらも愚かで愚鈍で無粋で可哀想な人間だ。
恥を知らぬのか創造主たる"我"を人の身に宿し、あまつさえ閉じ込めようとした人間には流石に慈悲を忘れそうになったが今は穏やかな気持ちで世界を見られる。
この"体の持ち主たる王子"の精神がとても優しく慈悲深く愚劣ゆえの結果だ。
人間は子として種として"総合的に愛している"が、この宿主だけは特別だ。
歴代の宿主とてこうまで優遇したことはない。
「ギルバート殿下。辛くはありませぬか。息苦しくはありませぬか。」
「問題ない。そなたこそ、人間は脆く、矮小だ。無理をするでないぞ。」
「…お心遣い痛み入ります。」
それ以降アルマは喋らなくなった。
乗馬しながらのお喋りは舌を噛みそうになるのだろうか。
民衆の声だけが響く道を視界に入れることすらせず進んだ。
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午睡(プロフ) - 空弥さん» ご感想ありがとうございます！早めの更新を心掛けて頑張ります！ (2019年2月26日 19時) (
レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - ナッツさん» ご感想ありがとうございます！とっても励みになります…！ (2019年2月26日 19時) (レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 絡みがすごく可愛らしくて好みです……！作者様のペースで更新頑張ってください、応援してます (2019年2月24日 13時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - 好きです!!!最高です！続きめっちゃ気になります！更新楽しみにしてます!!!!!!! (2019年2月24日 3時) (レス) id: 7b2bfdb44e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午睡 | 作成日時：2019年2月18日 19時
