【名前変換オリジナル】記憶保有期間、一年。

薬 ページ28

ぱち、と瞬きをする。
消毒液の匂いがした。
病院か。
……いや病院以外の記憶ないだろ。

「……起きたか？」
「……はい」

先生が顔をのぞきこんでくる。
薄い色の瞳に、心臓が暴れる。

「誤作動か？」
「……ん？」
「いや何もないです」

鎮まれ心臓。最近お前変だぞ。
ただ顔をのぞき込まれただけでドキドキするとか。

「……胃潰瘍だ。原因は恐らくストレス」
「……ストレス？」

ストレスなんてないのに、と首を傾げると、先生は目を逸らした。

「……自分でも気づかないストレスというのも、あるからな」
「あ、わかりました。先生の治療ですよ！だってめちゃ怖いですもん！これに決まって……痛い痛い痛い痛い！！」

顔が変形するくらい頬を引っ張られる。

「お前ほんとにいい度胸してるな」
「ふみまへん」
「……まあいい。薬がいくつかあるから、飲み忘れのないようにな」

袋からカプセルがあらわれる。


あれ。


どくり、と心臓が鼓動し、汗が滲んだ。

「……あか、の、カプセル」

脳内に赤と白のカプセルがちらつく。
怖い。何の記憶か分からないけど。

「……どうした」

先生が私の体を抱きとめる。

「……せんせい、」
「落ち着け」

背中をさすられる。
くるくると脳が回転する。

なんだっけ、何か、何か……。
思い出さなきゃいけないような、思い出しちゃいけないような。

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