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side沖田
部活中、何件も携帯に来ていた不在着信。
なんとなく、今日は朝から変な気がしていた。
空は快晴、
学校に来るまでの信号は全部青、
自販機に前の人の釣り銭が置き去りにされていて、
練習の調子も快調。
けど、素直にラッキー、と思えなかった。
まるで、神様が埋め合わせしてるみたいな。
考えちゃダメだ、気づいちゃダメだ、と思えば思うほど、
体は宙に浮いてるような、そんなそわそわする感覚。
そしてついに、神様が種明かしをした。
「あ、沖田ミツバさんの弟さんですか?実はお姉さまの容体が……」
なんで。
きっと良くなるって言ったじゃねェか。
嘘ぬかしてんじゃねェよヤブ医者かテメェは。
手術は大体お盆ごろのはずだった。
ただ走って、走って、走って。
電車の中でじっと座ってる時間ももどかしくて。
新しい、また別のヤツからの不在着信にも答える気にはなれなくて。
姉上は、体が弱い。
小さい頃から持病と生きてきたけれど、去年の秋頃、調子が良くなってきて、
もしかしたら普通に生活ができるようになるかもしれない、と聞いていた。
聞いていた、だけだった。
二週間前、姉上の容体が芳しくない、という連絡が入るまでは。
実際はずっと無理してた、隠してた、だなんて。
姉上はいつでも俺に優しいから、絶対そんなこと言わないけど、
ここまでになったのは、俺のせいじゃねェか。
俺が遠い高校で、何も気にせず、剣道に集中できるように、だなんて。
姉上らしいけど、そんなの全然嬉しくない。
それからはずっと、気に入らないことが続いた。
そりゃそうだ。元から気に入らねェヤツと生活してんだから。
そいつの一番気に入らねェとこ見て、ムカつかないわけがない。
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「お前は一年のエースなんだよ。俺らだって、やるべきことがある。」
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全部奪ってったくせに、クールな面は変えないまま、
でもやっぱり近藤さんの隣で。
もうちょっと、アホらしく、悲しそうにしてくれれば、
こっちだって仕方ないか、とも思えたかもしれないのに。
「……気に入らねェ。」
ラッシュ前の、人のまだらな電車の中、
誰にも届かない、本物の不満を、ようやく吐き出した。
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時