入水から始まる出会い ページ6
川から引き上げた男を慎重に地面に降ろす。
流れている時は分からなかったがレフに負けず劣らずの美丈夫だ。
目は閉じている。
この男、中々に着込んでいて服が水を吸って重かった。
『おーい、イケメンくん』
パシパシと頬を数回叩くと瞼が開く。
まつ毛が長い。
『あ、起きた』
むくりと上半身を起こした男はパチパチと瞬きをして「チッ」と盛大に舌打ちをした。
『舌打ち…』
「また入水が失敗してしまうなンて…」
『じゅすい…』
『樹水』、『授水』、『寿水』、…『入水』
レフの頭の中で知り得る『じゅすい』というワードが飛び回る。
川に流され、助け出せば失敗してしまったと嘆く
これは、まさか。
入水=自 殺の方程式が浮かび上がった。
『自 殺!?』
個性的な人々と触れ合ってきた流石のレフも驚いた。
自 殺自体ならば数多く見てきたし、それを全て阻止して平和的解決をしてきたが
この男は見た所追い詰められた表情もしていない。
しかし、自 殺をしようとするくらいだ。何かあったのではと段々困惑より心配が勝ってくる。
『何か、嫌な事でも?
死んでしまいたくなる程の悩みがあれば僕のできる範囲で手助けをしよう』
「いや、別に」
『うん?』
「ただ自 殺にもってこいの良い川だっから入水した迄だけれど」
そんな何を言い出すんだい君は、みたいな顔で見られても
此方が何を言ってるんだお前は!と言いたくなる
レフは、あくまで一般人である
魔人と呼ばれる男と友人でも、所詮はただの物書き
そもそも、本人はフョードル・ドストエフスキーが魔人と呼ばれていることも
最近横浜で起きた様々な異能災害の黒幕的存在だということも知らない
故にこそ、フョードルのことは根暗で人付き合いの苦手なら考えていることがあまりわからない。
が、放って置けない友人としか認識していない
そんなレフにとってこんな意味もなく自 殺する人間の気が知れない。
ーーというか、社会的にどうなのだろうか。矢張り、無職で行く宛もなく途方に暮れて入水自 殺なんて事をし始めたのでは?
目の前の男にそんな常識を当てがっても仕方がないと知らないレフは悶々と頭を悩ませた。
ーーーこれがレフ・トルストイと太宰治の初対面である。
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なはて(プロフ) - ものすごい面白かったです!作者様の気が向いたらでも良いので、続きを書いてくれたら嬉しいです! (2022年4月25日 7時) (レス) @page22 id: 72c776ebcc (このIDを非表示/違反報告)
天人鳥(プロフ) - すんごい続きが気になります…。更新お願いします! (2022年3月28日 19時) (レス) id: d581acac34 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - この作品完結してしまったのでしょうか…?続きが気になります! (2021年5月1日 12時) (レス) id: 5986ae6a0e (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - わたくしさん» それなです〜ほんと色とかもつけて欲しいです。絶対上手い (2021年3月27日 23時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
わたくし - 絶対デジタルで絵描いたら上手いですよ! (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6ee51eba6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年7月16日 23時