その気持ちは ページ15
ポートマフィア首領、森鴎外に共食いの異能を発動させた。
これで、トップの危機を救う為二社は争い合うしか道はなくなる。
ソ、とフョードルは口を吊り上げた。
「帽子がない…」
ふと、頭の中でこの帽子を贈った男の顔が浮かんだ。
"『何故何時もウシャンカなんだい?他の帽子は?』"
"『ジャーン!見たまえよ!君の帽子、少し小さかったろう?新調したのだよ、違うのも考えたけれど…矢張り君といえばウシャンカだろ?』"
"『あ!其れは、僕があげた帽子かい?嗚呼、嬉しいなぁ、矢っ張り君には白が似合う!』"
巫山戯た男だ。
勝手に土足で人のパーソナルスペースに入ってたと思えば、時折申し訳なさ適度の遠慮を見せる。
酷く胸がざわついてフョードルはレフのそれが不愉快で、苛立ってしまう。
「探しものはこれかい?」
フョードルの中でピタリと止まっていた世界が動き始めた。
そこには、太宰治が立っている。
アレが、僕に贈った帽子を、太宰治が我が物顔で、平然と被っていた。
視線が無意識の内に鋭くなる。
「おお、怖い怖い。
仮面の男すら囮にした二重の暗殺。君ならそれくらいはするだろうと思ったよ。だから逃亡経路を読んで待ち伏せさせてもらった。
…どう?似合う?」
「全く」
「あっそう」
じゃあ返すよ、と無造作に地面に落とされた帽子をフョードルはそっと手に取る。
心の中が煮え滾るような思いで埋め尽くされる。
何故、そう思うのだろうか。
それはフョードルもよく分からない。考えたくはなかった。
「君らしいやり口だ。憐れな神父の頭をいじって暗殺者に仕立て上げ二組織の長を襲わせるとはねぇ」
「それで、ご用件は?」
「社長に盛った毒の正体を教えてもらおうか。
君の目的はわかっている。
本を得るためには横浜の異能力者を根絶やしにする必要がある。
けど君達鼠にはギルドのように街ごと焼き払う兵力がない…だから暗殺で探偵社とポートマフィアのトップを落とそうとした」
その通り、太宰の言うことは全て的を得ている。
「何故そう思うのです?」
「私ならそうするからさ」
「似た者同士…ということですか。いいでしょう。教えて差し上げます」
気持ちを静ませて、フョードルは冷静に目の前の太宰をその目に捉えた。
腹の奥底から湧き出る怒りは、見ないように蓋をして。
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なはて(プロフ) - ものすごい面白かったです!作者様の気が向いたらでも良いので、続きを書いてくれたら嬉しいです! (2022年4月25日 7時) (レス) @page22 id: 72c776ebcc (このIDを非表示/違反報告)
天人鳥(プロフ) - すんごい続きが気になります…。更新お願いします! (2022年3月28日 19時) (レス) id: d581acac34 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - この作品完結してしまったのでしょうか…?続きが気になります! (2021年5月1日 12時) (レス) id: 5986ae6a0e (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - わたくしさん» それなです〜ほんと色とかもつけて欲しいです。絶対上手い (2021年3月27日 23時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
わたくし - 絶対デジタルで絵描いたら上手いですよ! (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6ee51eba6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年7月16日 23時