青髭と小鳥の娘 ページ5
お題【共依存】【小鳥】【扇風機】【日常】【秋空】
ふわり、煙草の煙が鼻をくすぐる。むせ返りそうになるのを抑えながら、目の前のコーヒーで口と鼻から入ってきたその香りを流した。この煙草は自分のものではない。嫌煙家である女は煙草を吸うことを良しとしなかった。この煙を燻らせているのは、さも当然と言わんばかりに対面のソファを占領する男だ。
「相変わらず珈琲臭いな」
「君は相変わらず煙草臭いね」
そう言いながら女は扇風機を付ける。空気を循環させれば少しはこの煙草の香りも薄れるだろうかと思ってのことだった。まぁ少しはマシになったと思っていいだろう。元凶が目の前にいるので完全に消えることはないが。
「そうそう、私が留守の間地下室は開けていないな?」
「開けないよ、約束だもの」
「かかか……利口な小鳥だ」
男はたまに一週間ほど家を開ける。その間は不自由しないようにと、男はマスターキーであるカードを女に握らせてから、毎度こう言う。『好きに使っていいが、地下室だけは開けるなよ』と。青髭だかフィッチャーの小鳥だかみたいで、それを知ってか知らずか男も女の名前とは関係なしに彼女を「小鳥」と呼んでいた。
「今回は仕事が立て続けに入ってな……また明日から家を開ける。いつも通り地下室だけは開けるなよ」
分かってるよと女は答えたが、今回こそは扉を開けようと決意していたのだ。素直に従う気など、今回ばかりは毛頭ない。しかしそんな思考を知る由もない男は、いつも出かける時にするように女の額に唇を当ててからその頭を撫でる。
「私はお前がいないと何も出来ないから、お前がどこかに行ってしまっては困るんだよ。だから私との約束は絶対だ、いいね」
一応形ばかり頷いてはいたが、男が出かけて一時間もすると女はすでに扉の前に立っていた。手渡されていたカードキーをかざすと電子ロックが開き、目の前の扉のロックが解除される。取手を握る手を、ぐいっと力を込めて前に押した。
「――え」
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いふ(プロフ) - 文々。さん» ひえ、褒めていただきありがとうございます…!正直自分の文に自信を無くしていたので文々さんのお言葉で少し自信が持ちました。邪神召喚の方も、小説家Aの方もいつも見させてもらっているほど大好きです!ほどほどに頑張ってください。 (2021年1月24日 9時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
文々。(プロフ) - いふさん» 的確なアドバイスが出来ない上、私が思うにいふ様の文はとても素敵なので、是非そのままいってほしいなと思っております……! (2021年1月23日 18時) (レス) id: d545e4385e (このIDを非表示/違反報告)
文々。(プロフ) - いふさん» お褒めの言葉ありがとうございます!飽きない地の文に関しては私も現在研究中でして、自分の何が飽きさせずにいふさんに読んでいただける原因となったのかが分からず…… (2021年1月23日 18時) (レス) id: d545e4385e (このIDを非表示/違反報告)
いふ(プロフ) - 私はいつも地の文をすっ飛ばして読んでしまう癖があるのですが、この作品の地の文はなんと言うか飽きない感じがあって、地の文も含めすぐに読み終わってしまいました…。どうしたら読者さんが退屈しないような地の文等を作れますか?宜しければアドバイスお願いします! (2021年1月17日 18時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
ウサッキー(プロフ) - 文々。@ortensiaさん» 適当な小説ものばかりなので、ちゃんと書いた小説を見て頂きたいと思ってしまった(((。アドバイス、ありがとうございました! (2020年8月25日 20時) (レス) id: f7bf947b75 (このIDを非表示/違反報告)
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