3 ページ21
.
止まった空気の中で漠然とした何かを頭に浮かべていると、つい口から出て来たのはそんな言葉だった。
これだとまるで少し前のヘチャンみたいに聞こえて子供っぽい。
オレは誰に対抗してるんだ。
そうじゃないのに。
いや、そうなのかもしれないけれど。
「マクヒョンはマクヒョンだし、ウィンウィニヒョンはウィンウィニヒョンでしょ。二人とも誰かの代わりになれるわけないじゃん」
「うるさい」
「ヘチャン、悠太くんかジャニさんの所に行ってマークの香水選んできてくれる？」
「は〜い！」
「げっ、香水まで……」
「何言ってんの、必需品！」
ヘチャンが「一番高そうなの持ってくるね！」と小走りに去って行けば、リビングにはまた少し静けさが戻って来た。
暖房から流れる風の音と、ヘチャンが遠くで誰かを起こしている音を聞いていれば、Aがオレに問いかけてくる。
「私よりマークの方がそういう顔してると思うんだけど」
「してない」
「マークはウィンウィンがいなくなって寂しい？」
「当たり前だろ」
「そっか」
「ヒョンのいたスペースに、無理やりジョンウヒョンを収めようとしてるのも違和感あるし」
「うん」
「……でも、誰が悪いとかって話じゃないんだよ。ジョンウヒョンがそういうのを気にしてる事も理解できるし、そもそもそんな事思わなくても良くて」
「そうだね」
「誰かが抜けた穴を、誰かが埋めなきゃいけないのは仕方が無くて、だけど、そしたら、」
そこで少し言葉に躓いていると、Aがオレの顎を指で持ち上げて、顔を上げさせた。
さっきは気付かなかった近いこの距離に、背中に少しだけピリッと電気が走る。
唇にちょこんと乗せたリップを指でトントンと、Aは薄く塗り広げていく。
明るくて濃い色は使ってないと願っておきたい。
まあヘチャンや一部のヒョン達と違って、Aはそんな事をしないだろうけど。
「私は誰が欠けても、きっと同じように寂しく思うよ」
「そりゃあ、まあ……そうだけど」
「ねえ、マーク」
「うん」
「こういうのにも、いつか慣れたりするのかな」
呟くようにそう言ったAは笑っていたはずなのに、今すぐにでも泣き出したそうな目をしていた。
きっと見られたくないだろうと思って、もう一度瞳を閉じる。
Aの、まだ少しだけ冷たい手が頬を撫でると、オレも少しだけ泣きたくなった。
...
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1495人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せの(プロフ) - みなみんずさん» こちらこそありがとうございます〜！わ〜い、そう言ってもらえるととても嬉しいです〜！！オタクライフ楽しんでいきましょうね〜〜！ (2020年12月14日 14時) (
レス) id: b15808b38b (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ちゃこさん» ありがとうございます〜！本当ですか？NCTもみんな面白いのでどんどん推し増ししていきましょうね！(？)これからも頑張ります！ (2020年12月14日 14時) (レス) id: b15808b38b (このIDを非表示/違反報告)
みなみんず(プロフ) - せのさんのお話をいつも読まさせていただいてます。私も最近NCTにハマりまして、せのさんのお話にたどり着いてからすごい勢いでハマっていきました！いつも素敵なお話ありがとうございます！これからも楽しみにしております！！ (2020年12月13日 14時) (レス) id: 9876ae2084 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃこ(プロフ) - せのさんのお話読みたいが為にNCT勉強してきました！やっと最新話に追いつけて感無量です(T ^ T)NCTもほんとに素敵なグループで、出会わせてくれたせのさんに感謝です！！これからも楽しみにしてます！ (2020年12月10日 22時) (レス) id: f83f7a2a16 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せの
| 作成日時：2020年12月10日 10時
