ヒャクサン ゾムSide ページ14
ついに開けてしまった、気持ちの箱
もう閉じる事はできない。
もういっそ、こっぴどくフラレてしまえば、心残りなんて無いだろうに
月明かりが照らす彼女の瞳は、宝石の様に輝いて、心の強い彼女を表すのにとても似合っている。
きっと俺はフラレる。
だって彼女の心は、あの生意気な後輩のものだから
でも、気持ちを伝える事さえ許されないなんてことは無い。
フラレる準備はできてる。
ただ、Aは酷いフリ方なんてしてくれない。
絶対に
『…ごめん、ゾム
これからも友達としていて欲しい。
これをキッカケに仲違いとか、絶対やだから』
困った様に笑うAは、俺の頬に伝う水を拭う。
ボヤける視界に嫌気が指す。
フラレたくらいで泣くとか、ダサすぎる。
もし、Aを助けたのが俺だったら、Aは俺を好きになってくれていただろうか
嗚呼、答えの無い世界は、どうも生きにくい。
俺は目を擦り涙を拭って、Aに笑いかける。
そうすれば、Aも笑ってくれるから
「なあ…A、目ぇ瞑ってくれん?」
これは俺の、最後の悪足掻き
『…?うん』
素直に目を瞑るA、このままどこかへ連れ去ってしまおうか
なんて冗談半分を交えながら、俺はポケットから取り出した筒状のものをAの唇に置いた。
Aは驚くこともせず、ゆっくりと目を開く。
『…口紅…?』
俺の手にあるバブルピンクの口紅を見て言う。
俺は口紅をAに握らせ、笑った。
「おん、ロマンチックやろ!
前にオバハンに連れて行かれて化粧品店に行ってな
Aに似合うやろなあって、買ってん。
貰ってくれるか?」
少しAを真似て首を傾げると、Aは目を輝かせた。
そのまま可愛らしい笑顔を見せて、バブルピンクに染まった唇を開いた。
『ありがとう!お化粧品、お母さんのしか持ってなかったから、めっちゃ嬉しい!』
これを聞いて、俺がプレゼントしたものが初めてだと知る。
少しばかりの優越感に浸れた。
そのまま俺たちは別れた。
一人自転車を漕ぐ俺は、立ち止まって口紅の空箱を見る。
優しくフラれるのは、酷くフラれるより、辛い。
友達として、明日から接する。
クシャリと空箱を握りつぶした。
なんて言うと思ったか阿呆がよぉ!!!
諦めたるもんか!!ショッピ君がA泣かした瞬間奪い取ったる!!!
こんな一回で諦めるような男とちゃうねん
まだまだ攻めんで
覚悟しいや…!
口紅のプレゼント
必ず取り返す
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サラミ - 一気読みさせていただきました!!最高です。ありがとうございました!! (2022年8月3日 10時) (
レス) @page30 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
ネミ - 読み終わった時めちゃくちゃ泣いました！本当に面白い作品をありがとうございます！弦生夏様のご活躍を願います！ (2021年8月27日 16時) (レス) id: 6a4c48ebc2 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - （続き）最高の時間でした。感謝してもしきれません。「視えてます」もこの作品の前に読みまして、間違いなく「勘違いすれ違い」が大好きになった原因は弥生夏様のお陰ですw 今後も応援させていただきます！最高の時間、ありがとうございました！ (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 読了しました！完結おめでとうございます！勘違いから生まれるすれ違いが毎回濃くて面白くて、かと思えば私に無い面白い考え方が幾つも出てきて、展開も最高で飽きず、最後まで楽しく読めました！個人的に、この作品のお陰で気付けた自分の気持ちも幾つかあり、（続く） (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 誤字の報告です。106の初めの方、「に聞くわない」じゃなく「気に食わない」じゃないですかね……？ (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生夏 | 作成日時：2020年6月1日 21時
