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―――イルミside


サロンから帰った翌日


オレの腕の中で大人しく眠っているAの髪を撫でる


静かに上下する肩


穏やかな顔


このまま時が止まってしまえばいいとさえ思った










・・・それがいけなかったのだろうか










腕の中で眠る片割れが、朝食の時間になっても目を覚まさない事に気がつく


時計は既に8時


朝食の時間だ


Aがこの時間にまだ寝室で横になっているなんて


滅多にないことではあるが、それでも恐らくゼロではない


仕事明けだ


起こすのも酷かと思い、オレもAと共に横になっている




胸がざわついた




不安にAを抱きしめる腕に力が入る


いつの間にか、日も傾いて来ている




「A・・・いい加減起きなよ」




小さく、手が震える




怖い




彼女の力なく横たわり続けるあの姿を


また、見続けるのかと思うと


気が狂いそうだ


感情など、とっくに捨てたはずなのに


彼女のことになると


何故こうも・・・




「ねえ、いつまで寝てる訳


オレの事、からかってる?」




頭の中で


不安と恐怖がグルグルと渦を巻く


口の中に、鉄の味が広がった




―――コンコン




「Aちゃん?イルミと一緒にいるの?


仲良しなのは言いけれど


ご飯くらい食べないと・・・」



部屋の外から、なんだか心配そうな母さんの声がする


夜、オレと外出することはあっても朝はきちんと決まった時間にフルーツを食べる


目が覚めてからは、仕事以外で朝食を抜いたことは無いのだ


「起きなよ・・・A・・・」


目から、涙が溢れた


最近のオレは、随分感情を取り戻してしまった


彼女が目を覚ました時を抜けば、もうずっと涙など流していないのに


恐怖など、もうずっと・・・


「イルミ・・・Aちゃんに


何かあったのね」


いつの間にか、部屋に入っていた母さんがオレを見て


異常を感知したようだった



「すぐにあの人を呼んでくるわ」


オレは小さく頷いた


親父と共に、弟達も一緒に駆けつけた


どうしても離れたくなくて


キツく抱きしめたまま、離したくなくて


ベッドの上から、動けない




「イルミお兄様・・・」


「兄貴・・・」


カルトとミルキの視線が痛い


誰かが死んだときのような顔をオレに向けている


「昨日、仕事があったな


・・・何があった」


「報告の通りだよ、親父」

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作者名:みこ | 作成日時:2022年7月12日 12時

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