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Aの手にはカクテルが2つ
「いいわね」
手近なソファに腰掛け、手を繋ぐ
彼女は本当に手が好きなのだろう
繋いだままの私の指を眺めながらグラスを傾けている
『そのうち、手を切り落とされそうですね』
クスクスと笑いながら語りかければ、「そんなことしないわ」と豪快に笑われた
「そういえば、外にいた男性は誰?
随分と親しそうだったじゃない」
空いたグラスを目隠ししたボーイに渡しながら彼女は私に問いかける
どうやらイルミと別れるところを見られていたようだ
『兄です
私とそっくりでしょう?
彼、心配性で・・・
今日、ここにシャロン様がお見えになるときいて
不安になったそうなのです』
私の手を眺める女性は「ああ、あの事件ね」と納得がいったようだった
『でも、兄の心配は取り越し苦労だったようですね
どこにも見当たりませんもの』
Aがホッとしたような表情を浮かべれば、目の前に座る彼女は目を大きくして驚いている
「あら、貴女ココは初めてなのね
シャロンは遅れてくるのよ
全員が揃った所を舐めまわすように見て今日の相手を決めるんだから」
ほう、彼女は遅れてくるのか
良かった
『マリア』
いい情報が手に入ったと、Aは赤いベールの
数十分後、廊下にカツカツとヒールの音が響き渡った
『見て来てくれる?』
Aの声に小走りで音の方へ向かう指フェチの彼女
「いらっしゃいました」
『ありがとう』
能力を解除すれば、私のすぐ横で眠り出す
ゆっくりと規則的に息をする彼女はとても穏やかな顔をしている
彼女の言うとおり、程なくして私のターゲットである“シャロン”が、部屋へと入ってきた
「ごきげんよう、皆様!」
真っ赤な髪をなびかせ、2人のメイドを引き連れた彼女は、頬を紅潮させ心底楽しそうだ
端から順に、集まった女性達を吟味していく
ピタリと視線を止めたのは
「貴女、ここへは初めてね」
『はい、シャロン様』
Aだった
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作者名:みこ | 作成日時:2022年7月12日 12時