【マギ】神出鬼没なマギif.〜もしもの世界で〜

5ー2 〜アルマトラン、迎えたのは最悪の結末?〜 ページ12

サァァア…。


柔らかな風が吹いている。


さっきまで、建物や人の燃える臭いがしていたのに。今はもうそんな臭いはしない。


浮上する意識に身を任せ、目を開ける。


「空…」


いつも見る青い空。
雲が所々ただよっていて、灰色の要素なんて１つもない。


綺麗…。
空って届きそうだけど届かないんだよね…。
ほら、こうやって手を伸ばせばすぐ触れられそうなのに…。


右手を挙げて伸ばしてみるも、やはり届かなくて…。


そしてその右手をまじまじと見て、今までどことなくふわふわしていた意識が覚醒しだす。


「〜!! 手の、傷が!! え、待って声も出せる!」


仰向けに寝転がった状態から、ガバリと身体を起こす。

あれだけ痛かった胸の痛みもない。肩から手の甲にかけて縦一文字に切られた傷もない。

ペタペタと自分の身体を触ってみるも、傷１つどこにも見当たらなかった。


そしてもう一度。
サァァア…と、大きな風が吹く。


「うわっ…」


思わず目を瞑ってしまう。
そして再び風が止み、目を開けた先にあった光景…。


「ここは…」


見渡す限りの黄金の世界。
眩しく、目眩のするその光景。

なんで、さっきまで気づかなかったんだろう。
こんな眩しい世界、どうなってるんだ僕は…。


ここにくるまでの記憶が抜けていることに気づいた僕。
しかし、こんな場所にただいるだけでは何も思い出せそうにないため、立ち上がった瞬間だった。


ブワッと黄金のものが飛び立つ。
ピィピィ…!! と鳴くそれ。


「これ全部…、ルフなんだ」


ルフが地面一帯を埋め尽くしてたんだ。

勢いよく飛び立つルフを見る。
そのルフを見て、徐々に鮮明になっていく記憶。


あぁ、そうだ。
僕、死んだんだ…。

じゃあ、ここは死後の世界…。


そしてふらふらと、しばらく彷徨った後。


「おい、A!!」


後ろから僕の名前を呼ぶ声に振り返る。


「何してんだよ、早くみんなのとこ行こうぜ」


笑って僕に駆け寄ってきたのは。


「ソロモン…?」


そして、その後ろに見える見知った人影たち。


「みんな、お前がくるのを待ってるぞ」

「そんな、追放されたのに。いいの? 行って」


そんなの関係ねーよって、笑いながら言ってくれるソロモン。


「ほら、行こうぜA」


差し出された手のひら。

改めて見るソロモンは、王の姿ではなく。

1人の、自由な人間だった。


「うん…!!」





ルフの舞う世界を駆け抜けていく。


握った手は、もう二度と離れることはないのだ。

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