【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第153夜 時の重み ページ6

柔らかくて暖かい。
優しい何かが僕の頭を撫でている感覚に目を覚ます。

「ぁ…、だれ?」

喉から出た声は、自分自身でも驚くほど掠れていて。まるで長い間喋らなかったみたいだった。

ここは何処だろうか? 何があったんだっけ?
思い出そうとすればするほど答えは遠ざかって行く気がして…。

てか、さっきから頭撫でてくれてるのは嬉しいんだけどさ。反応してくださいよ…。

「グルルゥ…?」

ん?え!?人間じゃない!? 異種族だ、でもこんな言葉聞いたことない…。脱走を繰り返して、種族の言葉は制覇したはずなのに…!!

ぼやけが消えた視界のなか。
そこに映るのは真っ白な天井。

「グルゥ…」

ひょっこりと目の前に姿を現す獣。

、、、。

「ぎゃぁぁああ!!」

「グルァーーー!!」

互いにパニックを起こす。距離をとろうとしてベッドから落ちるし、相手は扉をぶち破って何処かいくし。

「…、うぉお!! 誰か助けて!! 変なもの見ちゃった。あんな種族見たことない何あれ!?」


そしてその叫びを聞きつけたのか、こちらに駆けて来る足音が7つ。

「目が覚めたのかA!!」

先頭を駆けて来たかと思ったら僕を抱きしめるその人は。

僕と同じ色の目と髪で。わずかに見えた左目の八芒星。それにこの癖っ毛…。

「レイメス…?」

幼い頃、僕の事を実の娘のように可愛がってくれた一人である。

脱走する僕をいつも外で待っててくれて。
でもある日、さよならも無しに姿を消してしまったのだ。

「「「「「「A様!!」」」」」」

彼の肩越しに顔を覗かせれば…、

「あぁ…!! みんな、生きて!?怪我は、身体の傷は!?」

あの時となに一つ変わらない隊員達。レイメスの腕から抜け出し、もたつく足で駆け寄る。

抱き込むように支えられれば、その腕の暖かさを感じる。

「ごめん…、ごめんね皆!! あんな酷い目に合わせて!! 僕の考えが浅はかだったんだ、もしかしたら死んでたかもしれないのに…!!」

死ぬ間際の光景が頭を駆け抜けると同時に涙が溢れて止まらなかった。

「泣きたいのは私達ですよA様」

「うんうん…っ、怖かったよね」

「はい、とても怖かったです」

「ごめんね、本当に…!!」

優しく背中をさすってくれる手。頭を少し力強く撫でてくれる手。拭いきれなかった涙を拭ってくれるその手は確かにそこにあって。

「5年間も意識不明のA様を見てるのは怖くて堪らなかった…!!」

「…5年?」


壊れた扉から風が吹き抜ける風のなか。
僕は時の重みを知ることになる。

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