【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第193夜 優しさが狂気に変わるとき ページ46

アルバに胸を刺された時の回復がこの身体は間に合っていない。


治すために体力も消耗して。


僕の身体の何倍もある黒いジンに囲まれ、
戦い、魔力も残量がゼロに近いのだ。



「…っ!!」



ーピィピィ!!ー
(A、傷が開いてる!!)



巻かれた包帯に、じわりと血が滲んでいく。



あぁ〜、レイメスとセバスチャンに怒られる。
そして凄い痛いし…。
黒いジンに貫かれた横腹も腕も肩も痛いよ!!



「はぁっ…!!」



ーピィ…?ー
(魔力も体力も無くて苦しいんでしょ…?)

ーピィピィー
(もういいよ、Aの身体がもたないよ)




僕だって逃げたい、逃げてもいいって言ってる自分がいる。


どうせ追放された身だし、罪人に成り下がってしまった人間だもん。


こんな時に姿を見せなくても誰も責めないはずだもん。


でも…、




「助けて、あげたい…」



きっと泣いてる子がいる。


僕は、どっちの味方にもつけなかったけれど。


そんな曖昧な僕でも、泣いてる子達の手を握ってあげたいんだ…。



「こんな、罪人の手を握ってくれるか、分からないけど…」



ーピィ!!ー
(罪人なんかじゃないよ!!)



そう言いながら僕の周りを飛びまわる白ルフ。
黒いルフが舞う世界で、感化されないよう僕の周りにすごい近寄ってくる。



ぐいぐい近寄ってくる。


あぁ、肩なんかに止まったら!!
ほら〜、出血してるから血がついちゃった。



そのルフについた血を拭いながらやっとの思いで辿り着いた本拠地の近く。



「僕は入れないからね…」



追放された身だからこれから先は行けない。


こんな時に何言ってるんだって思われちゃうかもしれないけど、僕にとっては重要なことで。



「はぁ…」


ため息と共に視線を逸らしたその先に。
見覚えのある桃色の髪が地に横たわっていた。




「シバ…?」



記憶上にある人の名前を呼んでみた。


けれど、ぴくりとも動かない。




「シ、バ…?」


息絶えたのだろうか。
側に膝をつき様子を伺ってみる。


すると聞こえてくる消え入りそうな程のか細い声。




「A…。おね…がい。お腹の子…だけでも、助け…て…」




助けて…?

僕の隊員は助けてくれなかったくせに、自分の子は助けてって言うんだ…。


ねぇ、シバ。

それは都合よすぎるよね?







『あなたと貴女の隊員がどうなろうと知らないわ!! 』


「っ!! 君と君のお腹の子がどうなろうと知らないね…!!」





言ってやった…!!





そうして僕はその場を去った。

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