第189夜 2人の王様 ページ42
ワァァアア!!!
広大な地に響く歓喜。
「王よ! 」
「王よ! 」
「 ソロモン王よ!」
「あなたの他には志した者すらおりませぬ。このような途方もない素晴らしい夢を……」
王冠をかぶった青年が手をあげる。
布が顔を隠すかのように垂れ下がり、王冠は太陽の光を受けて反射する。
後ろには3人のマギ。
幾多の戦いを共にした同胞。
各種族の長。
右手を胸に当て、金属で着飾った凛々しい姿。
「本当に、そう思ってくれるか?」
王が側にいる1人の女性に尋ね。
そして答えるのだ。
「もちろん」
ーー
そんな式典を、離れた場所から見つめる人影。
大木の上に腰をかけ、木々を揺らす風に綺麗な金髪が揺れる。
『あなたの他には志した者すらおりませぬ。この途方もない素晴らしい夢を……』
本当にそうなのだろうか。
志した者はもう1人いるのではないのか。
この時、世界は間違いをおこした。
太陽の王様を正式な王にするなら、
月の王様も正式な王にするべきだったのだ。
何より、誰より力を費やした者が追放された。
式典に出る事もできず、3人のマギ達のように煌びやかな冠を着けることもない。
「うぅ…、ひっく…」
ぽろぽろと涙が落ちる。
ライという青年が死んだときも泣かずに耐えた月の王様が泣いている。
隊員の死に涙を零している。
「あっうっ…」
泣かないで、泣かないで。
と世界が言う。
止まることのない涙を拭うように優しい風を吹かせる。
ーピィピィー
(A様 )
ーピィピィー
(泣かないで、ほら笑って)
膝を抱え、顔を埋めて泣く王様に。
臣下である星たちの声は聞こえない。
ーー
僕は知っていたはずだ。
どれだけ世界が残酷かを。
ソロモンには仲間もたくさんいるのに。
僕の手元には何一つ残らなかった。
大丈夫、安心して…。
君たちだけあんな苦しい思いはさせないからね。
君たちだけ理不尽な死に方させないから…。
僕らは平等を掲げたレジスタンスだもん。
「死に方もみんな、平等じゃなきゃ…」
ゆらりと立ち上がり基地を見つめる。
この大木からは基地が全て見渡せる。
ねぇ、チャンスだよ。
今、攻撃すれば確実にみんな殺せるよ?
僕は百戦錬磨だ、殺れるよ…。
グッと神杖を握り振り上げる。
簡単に死なせない。
見ててね、みんな…!!
「苦しんでくれるように頑張るから…!!」
ザァァアアと風が吹き荒れる中。
僕は神杖を振り下ろした。
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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時