【マギ】神出鬼没なマギ2.〜王の器になるべき者〜

第93夜 いっときの感情に打ち勝つ強さ ページ44

人はいっときの感情で動いてしまう…。
そんな種族だ。






腹が立ったから殺してしまった。
そんな人は、ふと我に返ったときに途轍もない後悔を抱くだろう…。







いっときの感情は恐ろしいものだ。









「おねーさーーん!!」


さっき逃げて来た方向から僕を探す声。
まぁ、こんな人混みの中見つけるのは難しいだろうなぁ。


「おねーさーーん!!」


大きな声を出し、この人混みの中を探す彼。


会わす顔が無い。とは言っても、マグノシュタットでの戦闘やシンドリアで少しだけ会わせてるんだけどさ…。


ユナンから差し伸べられた手を借りて立ち上がる。


てか、

「よく僕だって分かったね」

「女の子なのにそんな貧乳なのはAくらいじゃん」

「…」


あぁ?
てことは、僕の胸見て判断したってのか?


「ふふ…。Aの今の顔面白いよ」

「ははは!!ユナンの変態っぷりの方が面白いから!!」

「ふふ…。Aの貧乳には負けるよ」

「くっ…!!」


返す言葉が見つからない!!
見ろ!!此奴の勝ち誇ったような満面の微笑みを!!
見てるだけで腹の底から…こう…何て言うか!!


「うあーーー!!」

「うわぁ!!」


僕の叫びとほぼ同時に聞こえた声。


「びっくりするじゃないかお姉さん!!」

「…、うおおおおお!!」


すかさずユナンの後ろに避難。
此奴いつの間に側まで来てやがったんだーー!!


「お姉さん!!どうして僕から逃げたりするんだい!!」

「会わせる顔が無いからだよ!!」


…。


勢いに任せて言ってしまった…。
目の前には目を見開くアラジンと僕を不思議そうな顔で見るユナン。


「やっぱりお姉さんは…」

「そうだよ!!そのやっぱりだよ!!謝っても許して貰えないだろうし、許されることじゃないけど、一応謝っとくよ!!ごめんねアラジン!!」


はぁはぁ。
一気に喋ったから呼吸が乱れたわ。


「え?え?」

混乱するアラジン。
そりゃそうだよなぁ。突然謝罪の言葉羅列されられたんだもんなー。









いっときの感情は恐ろしいものだ。



人を殺めた後に途轍もない後悔を運んでくる。


だから流されてはいけないのだ。


いっときの感情に打ち勝つ心の強さを持たなければ。


『A…。おね…がい。お腹の子…だけでも、助け…て…』


僕はあの日、いっときの感情に負けた。


『っ!!君と君のお腹の子がどうなろうと知らないね…!!』


許さなければならなかったのだ。


2人の親子の輝く未来を守るならば…。

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