【マギ】神出鬼没なマギ2.〜王の器になるべき者〜

第80夜 世界は時に残酷だ ページ31

世界は時に残酷だ。









「くっそ…!!やられた!!」

先程、僕の魔力で空間の歪みを直そうとしたところ見事に失敗…。

いや。半分成功かな。歪みはほんの数センチしか塞がらなかったけど、まぁ。うん。いいとしよう。


「いったい…!!」

歪みを直す代償なのか知らないが、右手首から肩にかけて火傷…。

「こっちは世界の為にやってんのに何でこんな…!!」


くっそ…。めちゃくちゃ痛い…!!
治癒魔法とか得意分野じゃないっつーの!!

「主…」

魔力逆流防止弁外したからシトラー実体化してるし…。

てか、
「そんなまじまじと見んな…!!」

「蹲って居る今の主に言われても」

「ンニャ!!」

ンニャ!!じゃねーんだよこっちは。魔力も直す時フルに使ったしシトラー実体化してるで残量残ってないし…。


「堕転しちゃうぞ〜…!!」

こんな冗談を言ってないと意識飛びそう…。



「…」

「…」


僕達3人を取り囲む草木が夜風に靡く中…。


「いいですよ…」


囁かれたシトラーの声。

「主…。世界の為に動くのは疲れましたか?」

「…そうだね」


アル・サーメンに狙われるわ、こんな重傷負うわ。もう勘弁だよ…。

それは心の奥の奥の…。
ずっと自分で封じ込めてきた本音で…。


「こんな僕が君の王なんて笑えるよね」


大切な命一つ守りきれなくて、皆から幸せを奪った僕…。人の幸せを、大切な未来を奪っておきながら僕が生きてるなんて…。


「私…。主が来るのを信じてずっと待ってました。魔道士だけど金属器が持てるとウーゴ様から聞かされた時からずっと…」


そう言うとそっと僕の頭を持ち上げて膝枕してくれるシトラー。


「…。約1000年間、お疲れ様」


その間、僕よりもいい王候補が何人来たことだろう。
いつ来るか分からない。
もしかしたら一生来ないかもしれないたった
1人の僕を待ってるなんて…。


「例え主が堕転しようとも、私はついて行きますよ」

「ニャ〜」

「はは。それは困るな〜」

頬擦りしてくるクロを抱き寄せる。
あ〜。あったかい。
眠たくなってきたー。



「もう1人で寂しい思いはさせないんですから…」

腕が痛む中、そんな声が耳に届く。


「だから今は、ゆっくり寝てください」

そしてそっと…、
シトラーの手が僕の瞼をおろす。









世界は時に残酷だ。
僕なんかより優れた者が沢山いる世界。
なのにこんな僕を選んでしまう君達…。









世界は時に残酷だ。

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