いつも通り ページ12
Aは太宰に云い包められ、何とか其の拳を下ろした。
と云うか、そもそもAは本気で殴る心算は無かったし、「仮に本気で殴っても軽く避けられるんだろうな」と内心では思っていた。
其れは粗方正解で、太宰は予備動作も無しに華麗に避ける事だろう。
其れにしても、だ。
Aは呆れた様に溜息を吐くと、ジト目で太宰を見やった。
「いくら何でも、久しぶりに逢った相手への第一声が『生きてたんだね』は如何かと思いますよ」
「だってまさか、生きてるなんて思わなかったから」
「何で死んでる前提なんですか」
太宰は悪びれる事なく云う。
其の表情には先程の出会い頭の様な迷子の子供が浮かべる顔ではなく、いつもの様な何処か食えない笑みを浮かべている。
*
「単刀直入に云うと、Aちゃんはヤバい奴に命を狙われていてね」
「ヤバい奴」
「うん。其奴の名はポール・ヴェルレエヌ。暗殺王って呼ばれてる程にヤバい」
まぁ、そうでしょうね。
Aは昨日の事を思い出して、そっと腕を摩った。寒気がする。
太宰はそんな彼女を横目で見ながら話を続けた。
「僕はまだ仕事が残ってるからもう帰るけど、一応忠告はしておくね」
太宰は未だに寒そうに腕を摩っているAの手を掴んで取り上げる。其処で、下を向いていたAは太宰と目が合った。
「死にたくないなら──家族を巻き込みたくないなら、事が収まる迄は家には帰らない方が佳い。時期に中也達が来る筈だから、其方について行って。何方にしろ死ぬ確率のが高いけど、中也について行く方がまだずっとマシな筈だから」
「……判りました」
まぁ、既に殺されたんだけどね。
余りにも深刻な太宰を見ていると、Aは何だか申し訳なくなってしまった。
*
太宰はAからの返事に、首を傾げた。彼が想定していたよりも、物分かりが佳かったからだ。
そんな太宰の様子を見て、Aも訝し気に首を傾げて見せた。
「いや、一寸驚いてね。普段の君なら、絶対『また厄介事に巻き込まれた』だの『巫山戯るな』だのと云うでしょ?」
「云いませんよ……今回のは不可抗力でしょう。如何しようもないです」
「前回のも意図した訳ではなかったのだけれど」
「黙らっしゃい」
太宰はいつも通りのAを見て、ふと思った疑問を口にした。
「其れにしても、驚かないんだね。命を狙われてると聞いた割には平常心過ぎないかい?」
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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時